ユネスコMAB国際調整理事会の報告

Date: Thu, 19 Jul 2012 10:32:34 +0900
 9月9-13日までMAB計画(人間と生物圏)国際調整理事会(ICC)日本政府代表としてユネスコ本部パリにいました。木曽ユネスコ大使にも参加いただきました。
 このうち、韓国非武装地帯のBR登録申請が審査委員会の登録勧告が覆されて投票にかけられることなく見送りとなったことは、MAB-ICCとしても国際審査委員会としても反省すべきことだと私は思います。【】長年、韓国は北朝鮮に非武装地帯の共同登録を呼びかけていたと聞いています。それは平和を促す行為で好ましいと私は思いました。今回も、近い将来北朝鮮側も指定してほしいという演説でもあれば、機運は変わったかもしれません。【】イムジン河という、渡り鳥が南北を飛び交う分断を嘆く歌がありますが、この歌は韓国側でも歌われていると言っていました(まだ半信半疑ですが)。
 もう一つ、すでにご存知かもしれませんが、世界遺産条約会議の場で、知床などの遺産地内のダム撤去を求める動議が出【】たそうです。この議論では当事者の日本は直接発言できずに苦労したと聞いています。

Date: Wed, 1 Aug 2012 08:28:00 +0900
 知床では、登録の際にIUCNから(海域やダムなどに意見する)書簡が2回届き、それに科学委員会と地元が答えた経緯を、IUCNが「ボトムアップの取り組みは他の遺産のモデル」と評価され、国際コモンズ学会が「日本の沿岸漁業の共同管理」として世界のインパクトストーリ―に選びました。このたび、海域WGの桜井座長が環境保全功労賞を受賞します。
 それを成功ととらえ、屋久島を含めた自然遺産に科学委員会が設立されたと思います。
 その「成功」の基本は、「世界遺産という世界標準を満たしつつ、地元が合意できる解を示した」ということに尽きると私は思います。ただし、知床といえどもそれははじめから完全なものではなく、登録直後の2005年6月2日読売新聞は「知床が遺産に登録されると、(遺産条約会議からの勧告によって)漁業規制がどんどん膨れあがるのではないかという羅臼の漁民の心配が、現実となった」と報道しています。その後も、様々な外圧がありましたが、科学委員会は地域に必要な措置を求めつつ、外圧に対しては「地元の盾」となって世界に説明してきたつもりです。
 この6月の世界遺産会議でも出てきた(知床の)「ダム撤去」決議案についても、「ダムが守る防災対象がなくなれば、ダムも撤去できる」という気長な(しかし当然の)方針を掲げ、その条件がそろいつつあるところです。
 もちろん、知床でも、科学委員(少なくとも私)の提案で、実現することは半分以下といっても過言ではありません。我々はあくまで「助言」する立場であり、命令や審査する立場ではありません【】。最終判断は政治(行政)が行うことになります。
 ただ、それは、行政判断を追認することだけが期待されているという意味ではありません。もちろん、「諮問」された以外のことまで意見を述べる立場でもありません。
 シカの分布が連続している限りにおいて、当然、遺産地域外のことも考慮することになるでしょう。(知床クマ管理方針では、遺産地域のクマの行動圏内にある標津町も含めた管理方針を定めました)もちろん、その場合に、関係諸機関などとの連携が必要【】です。