知床世界遺産の懸案事項としてのトド問題

Date: Wed, 09 Jul 2008 04:44:26 +0900
 洞爺湖サミット期間中の8日夜開かれた日露首脳会談で、北方領土交渉の前進と、生態系保全について合意したと報じられたそうです。
 日露専門家会合が5月に東京で開かれてから、日露両国周辺の生態系保全についての協働が議論されています。上記合意に加えて、知床世界自然遺産について、IUCNが繰り返し係争地域(北方領土)とロシア側への拡張の可能性に言及している点に注目しています。
 現在は世界遺産会議の会期中でもありますが、2008年2月に知床に調査に訪れたユネスコとIUCNの調査団の報告については格別意見もなかったようです。この報告書には、海域管理計画などへのさまざまな勧告があり、その中に、トドの保全が含まれています。
 トドは駆除と混獲という人為的死亡要因がありますが、北海道での混獲数が集計・報告されていないという大きな問題があります。トドはPBR(生物学的潜在駆除数)の概念に基づき、120頭という駆除枠の上限が今年度から定められたところです。海獣類を捕獲すること自体に批判が強い中で、責任ある体制で個体群管理を行うことは最低限の条件です。
 残念ながらトド問題に関しての国内世論は環境団体も含めてあまり盛んではありません。日本近海に来遊して漁業被害をもたらすトドは日露が共同管理すべき生物であり、国内でしっかりと議論をつめる必要があります。
松田裕之