知床世界遺産の試練

Facebook 2018/5/5
IUCNの登録延期勧告を受けて,今年の世界遺産委員会での奄美・沖縄の議論が注目されているようだが,知床のトドとダムに関する決議が2012年,’15年と繰り返し議論され,’19年にも議論される。知床と奄美・沖縄の評価が連動する可能性もあるかもしれない。
 2012年,’15年の知床に関する世界遺産委員会の決議を含む経緯はこちらからわかる。
 2017年の日本政府の知床の保全状況報告書とそれに対する世界遺産センターとIUCNによる分析はこちらからわかる。その末尾に,来年さらに議論すると書かれている。

Date: Fri, 5 Jul 2019 09:23:27 +0900
先日申した通り,知床のトドについては重ねてIUCN及び世界遺産委員会(7月3日報道)において,現行の規模でのトドの捕獲を再考することを強く要請(urge)されています。【ダムについては,十分に納得させることができたようです。】
 知床は日本の一部であり,上記問題について,【トド管理検討会議で】全く触れないのはまずいと私は思います。
 本来,今回の見直しで,知床も含めたトドの評価と採捕枠設定ができればまだ説明できたと思いますが,2005年の遺産登録時,その後の海域管理計画策定時に比べて,知床のトドの採捕については科学的説明が維持できているとは言えません。しかし,将来でもよいですから,検討いただければ幸いです。
 参考までに,再度IUCN勧告を添付します。
 知床世界遺産科学委員会(桜井座長)は,獲るなという主張でなく,IUCNを説得できるようにしたいということでほぼ一致していると思います。
世界遺産委員会該当部分の仮訳 決議43Com7B10(21頁)
・トドについて、共同研究やロシアが開発予定の人口動態モデルが、 まとまり次第提供することを要請(決議事項案3。動詞はrequest)
・トドの捕獲が漁業被害低減に効果的であることの説明(justification)の提供を要請(決議事項案4。動詞はrequest)
・予防的アプローチに基づき、現行の規模でのトドの捕獲を再考することを強く要請(決議事項案4。動詞はurge)
・海域管理計画にトドのモニタリングと管理の詳細が欠落(lack)していることを懸念し(note with concern)、同計画を強化するとともにトドについて予防的アプローチをとりいれることを要請(決議事項案5。動詞はrequest)