下北半島のニホンザル保護管理計画について話を聞いた。
早速HPを検索してみた。毎日新聞のMSNサイト2005年2月13日 東京朝刊によると
戦前まで食用・薬用として捕殺・利用していたという。そうか、サルも食べていたんだ。
1960年代には200頭にまで減ったという。それが今では1200頭ほどいるそうだ。
おそらく、サルは群れごとに追跡して観察しているから、個体数推定は比較的正確だろう(要確認)。だとすれば、40年間に6倍に増えたことになる。ということは、複利で1年当たり4.5%の増加率である(1.045の40乗は6).現在1200頭だとすれば、年間55頭ずつ増える計算になる。
ところが、今は年間24頭ほど捕獲し、これで均衡するとしている。捕獲個体の雌雄の比率にもよるが、これは過小評価ではないか。過去40年に比べて、過密になった今では個体数増加率が下がっているといえるだろうか?私には、あまり根拠がないように思われる。(皆さんのご意見をお待ちする)
生存率や繁殖率の推定値には誤差がつきものだ。まして、それを毎年一定と仮定すると、変動している状況では正しい増加率を算出しない(拙著「ゼロからわかる生態学」第2章)。
悪さをするサルだけを薬殺するというのは、ニホンザル管理の望ましい姿かもしれない。しかし、それでは個体数は増え続けるだろう。そのことを承知の上で望むならそれでもよいが、事実認識の再検討が必要だ。
このような場合、第1の選択肢は、「過去の(問題がなかった)状況に戻す」ことである。この場合は、食用・薬用に利用する状況に戻すことだ。それができないとすれば、何か別の手立てが必要だ。自然にニホンザルの個体数が均衡し、人と共存できるという保障は、過去の歴史にもない状態を想定しているということを、まず、認識する必要がある。それは、鹿や熊の管理にも通じることである。