知床世界遺産のトドと蕪栗沼ラムサール条約のマガン

 聞くところによるとマガンの飛来地の一つである蕪栗沼が、「今年11月にアフリカ・ウガンダで開催される条約締約国会議で蕪栗沼が登録されることがほぼ確実になった」らしい。マガンは1940年代に6万羽ほど飛来し、1970年頃には約5000羽に減ったものの、その後は禁猟と飛来地保護により増え続けているという(越冬地の生息地数は回復していない)。
 出水の鶴もそうだが、餌付けによって保護しても、増えた個体が周囲に農業被害を与える。激減したものを保護して増やしたことは成功といえるが、「自然の過保護」も問題である。
 既に数万羽に回復したのだから、もはやマガンの禁猟を続ける必要はない。管理捕獲が十分可能であるし、それによって農業被害を防ぐ必要があるだろう。日本では絶滅危惧種にいったん指定したらほとんど解除されないが、米国では白頭鷲を始め解除され、解除した際には保護団体が祝福している。天然記念物指定を外す必要はないかもしれないが(カモシカも駆除している)、駆除よりも狩猟によって利用するほうが望ましいという主張もある。
 それと、ラムサール条約への指定は矛盾しない。貴重な飛来地が維持されているからこそ回復したのであり、ラムサール条約で指定された飛来地のマガンを捕獲することは可能であろう。その意味では、鳥獣保護区に指定しても悪くはない。ただし、鳥獣保護区=禁猟区という位置づけだとすれば、鳥獣保護区の考え方の見直しが必要だ。
 世界遺産に指定された知床でも、漁業とトドの共存を目指している。トドを一頭たりとも駆除するなとは、IUCN(国際自然保護連合)は勧告しなかった。これは特筆すべきことである。それならば、ラムサール条約指定とマガンの狩猟鳥獣化も,両立が可能だと思う。
 すぐにとはいかないだろうが、科学者はマガンの狩猟解禁に向けて準備を始めるべきだと思う。