日本の調査捕鯨の捕獲枠拡大について

Date: Wed, 13 Jul 2005 05:29:49 +0900
○○様、【日本の調査捕鯨の捕獲枠拡大に反対する署名運動について】のお話ですが、私は調査捕鯨の捕獲枠を増やすことに反対するつもりはありません。数十万頭いるミンククジラのうちの1000頭を取ることに反対する根拠は何でしょうか?これが乱獲に当たるというなら、根拠を示してください。
 そもそも問題は、RMP*1で科学委員会が合意しているのに、商業捕鯨を再開しないことにあります。より多くの調査データが必要だというなら、捕獲枠を増やすことになるでしょう。特に、さまざまな鯨種の調査捕獲が必要になります。
 日本にとって、捕獲枠を増やすこと自身にあまり意味があるとは思いません。いまのところ需要が増えているわけでもない。IWCが本来の使命を果たしていないことを示す以上の意味はないでしょう。たしかに、捕獲枠を増やすことは、短期的には合意を促進する行為とはいえません。しかし、だからといって反捕鯨の運動に賛同しても、ますます合意を得ることにはなりません。双方の妥協を図るような提案をしなければ、意味がありません。
 たとえば、WWFジャパンの主張に賛成するという共同声明なら、大いに検討の余地があります。この声明には、調査捕鯨の枠組みを増やさない、透明性を高めると言う趣旨と同時に、商業捕鯨そのものを認める条件が示されています。
 また、日本政府が主張する、無記名投票制度への改変に賛成すべきです。反捕鯨団体は、日本が途上国から票を買っていると宣伝していた。それならば、無記名投票のほうが票は買えないはずです。反捕鯨国が記名投票にこだわるのは、逆に、彼らの側が圧力をかけていることを示唆しています。この考えが誤りと言うならば、その根拠を示してください。
 無記名投票に変えても、捕鯨国が過半数に変わることはありえても、3/4を締めることはできないでしょう。ということは、重要な決定はできないことになります。IWCの機能不全状態は今後も続くと言うことでしょう。

Date: Wed, 13 Jul 2005 11:29:17 +0900
○○さん ○○さん、【略】沿岸捕鯨のほうが優先度が高いということに賛成です。しかし、持続可能な利用を図る点で、現金収入がいけないというつもりはありません。詳しくは【書評*2】をご覧ください。南氷洋捕鯨を再開してはならないとする、いかなる国際法上の制約も、生物多様性条約の理念からの根拠もないと思います。【略】
 反対して解決に向かうと考えるなら、私とは政治的判断が違います【略】それには、妥協が必要だと言う構図にする必要があります。調査捕鯨枠の拡大だけに反対しても、そうはなりません。【略】むしろ調査捕鯨を続けるより、商業捕鯨を再開したほうが捕獲枠を制御できることを知ってもらうほうが、私個人としては有望だと思います。【略】これは私の推測ですが、日本政府は、わざと過半数を得ないような提案をしているように見えます。下関のあとの特別会合で、せっかく米国が日本の沿岸捕鯨に賛成したのに、翌年捕獲枠を大幅に増やして米国を反対に戻している。【略】もし過半数を超えれば、【略】圧力から、IWC脱退、商業捕鯨再開へと要求が膨らむことを、政府としても制御できないのかもしれません。この推測が本当だとすれば、たしかに、枠拡大は無意味な行動ともいえます。脱退を覚悟してもよいならば、○○さんの言う【調査捕鯨の捕獲枠拡大は】「沿岸捕鯨再開に棹差す」と言うのは正解だと思います。しかし、それは反対署名の主催者とは全く異なる思惑でしょう。
 あれほど大幅な捕獲枠拡大をしても、反対票と賛成票の差はむしろ減っているのです。捕獲枠を増やさず、秘密投票にすれば、調査捕鯨賛成、沿岸捕鯨賛成が過半数を占めた可能性が高い。(沿岸捕鯨再開には3/4必要、調査捕鯨は条約上報告のみでよい)
 いずれにしても、将来、IWCを脱退しないと沿岸捕鯨は再開できないでしょう。脱退は外交上は望ましくないが、沿岸捕鯨を守る上では致し方ないという側面もあります。【略】

*1:改訂管理方式

*2:書評 ジェフリー・ヒール著「はじめての環境経済学」(東洋経済新報社細田衛士・大沼あゆみ・赤尾健一訳2005)環境経済政策学会年報 掲載予定