Date: Sat, 17 Nov 2007 10:41:34 +0900
割引率の概念では時間的なスパンが現実的ではなくなるので、単純に10年間の長期利潤を比較する話にしたほうが良いのではと思います。実経済において選択できる長期債は10年であり、その10年間の利益を比較するのがまずは現実的だと思います。
別の経済学者も似たようなことを言っていました。たしか、100年?以上先まで積算するのは無意味だと。
しかし、依然として、それでは多様性は守れないとおもいます。遺伝資源など、10年先までに経済価値を生む見込みのないものは多々あるでしょう。温暖化、石油の枯渇さえ、10年先まででは備える必然性はない。100年先までと言い換えても、全部は解決しないと思います。
やはり、これだけでは、多様性を守るには、「お金で買えない価値がある」からということになるでしょう。
Date: Sun, 18 Nov 2007 01:49:53 +0900
結局,やはり、「お金で買えない価値がある」ということ |
はい。そうだとおもいます。 その上で言えることは
1) 効用で計れる価値を考えることは経済学者の営為である
2) 経済学者も、自分の営為だけがすべてだとは思わない(人もいる)
ということだと思います。
数理生態学も同じです。自分がモデル化できることだけが、生態学のすべてであるとは、少なくとも私は思っていません。しかし、自分ができることをするのは、しかたがないことです。
Date: Sat, 17 Nov 2007 09:33:10 +0900
皆さま 前にも紹介したと思いますが、
生物多様性の割引率については以前 環境経済学者の岡さんと共著論文
Oka T, Matsuda H, Kadono Y (2001) Ecological risk-benefit analysis of a wetland
development based on risk assessment using `expected loss of biodiversity'. Risk
Analysis 21: 1011-1023.
でも使いました。ただし、より簡明なΔ(1/T) (絶滅平均待ち時間の逆数の増分) を主に使いました。
下記論文でも使いました。要するに、現在種が存続している価値に比べて、t年後に存続する価値を割り引いて評価し、将来にわたる多様性の確保を価値評価するというものです。
Matsuda H, Serizawa S, Ueda K, Kato T, Yahara T (2003) Extinction Risk Assessment of Vascular Plants in the 2005 World Exposition, Japan. Chemosphere 53(4): 325-336.
重要な論点は、将来の生物多様性を守るのには、経済的割引率は高すぎて現実的に使えないという点です。経済的割引率より低いどんな割引率を使うか、それにどんな合理性があるかは、経済的割引率とは別の論拠が必要でしょう。