京都大学シンポジウム「京都からの提言(3)]

 京都大学附置研究所 ・ センターシンポジウム「京都からの提言(3):人間と自然‥新たな脅威と命を守るしくみ」(横浜・新都市ホール)に参加した。さすがは京都大学、市民向けの話も分かりやすく、見事でした。特に、山中さんのはとってもわかりやすく、また、本人の困っている人々を助けたいというひたむきさが伝わるお話でした。
 頂いた時間は5分だったので、多くは語れませんでしたが、パネル討論の主な議題は、「新たな技術を生み出したとき、必ずプラスとマイナスの側面がある。これは医学も生態学も同じ。新技術はどちらも大量にあるのですべての安全性を確認してから実用化しているわけではない。思わぬ副作用もありえる。だからリスク学が必要になる。皆さんそれを踏まえた話をしていたが、今日の話は自然科学者が中心だった。新技術が新たな差別を生むおそれなど、人文社会科学的視点も必要で、それには多分野の専門家の相互理解と連携も必要になる。」というものでした。
 私のスライドにはもう一つ書いてあって、環境問題や生命倫理の問題は、外交カードとしての側面があることに注意すべきです。万能細胞のような再生医療についても、移植と同様、倫理問題の取り組みを米国では始めているということですが、これは単に善悪だけの問題ではなく、さまざまな問題やもめ事を想定して対処しようとしているのでしょう。あるいは、自国の立場を有利にしておこうという意図もあるかもしれません。遺伝子組換え農作物に関する基準が欧州と米国で異なるのは、各国の農業問題の違いを反映している側面があると言えるでしょう。日本はこの「外交的側面」にきわめて疎い。私の所に外務省が相談に来た経験はほんの数えるほどしかありません。科学者の側も、この点に、もう少し敏感になったほうがよいのでしょう。