平成19年度知床世界自然遺産地域科学委員会エゾシカワーキンググループ第2回会議 議事概要 松田の主な発言

■ 日 時: 平成20年3月4日(火)13:30〜16:30
■ 場 所: 釧路地方合同庁舎5階 第1会議室

  • 梶座長が作成したプレゼンテーションおよび環境省からの密度操作実験等に関する資料の作成により無事に終えることができた。重要だと思ったことは、遺産登録地の核心地域である知床岬においてエゾシカの人為的大量捕獲について説明し、IUCNのシェパード氏にその場で支持すると仰っていただいたことである。世界遺産条約全体の流れからも非常に意義のあることではないかと思っている。 もう一点は、シカの個体数だけではなく生態系、つまり自然植生を含めた指標をしっかりと作りなさいという意見を頂いたことであり、非常に重く受け止めなければならないと思っている。
  • 知床岬で最初に密度操作実験を行うということに際して、数候補地を挙げてそれぞれの候補地の長所短所を比較して決めてきた経緯がある。本当にそのような長所があったかどうか、あるいは思いもよらない短所があったといったようなことも含む検証作業が必要である。特に核心地域内で密度操作実験を行うということ自体は、基本的にはIUCNおよびユネスコの理解は得られたという点は新たな状況である。 また、死体を基本的に回収する方針となったことや、今まで検討してきた時と実際の状況は少し違ってきているのではないかと思うが、これらの点も含めた費用対効果についてももう一度検証する作業が必要である。
  • まず、民有地であるために一般狩猟者が入れない場所がある、だから閉じたらいいのではないかという意見もあるとのことであった。これは当然地元で様々な議論をするところだと思うが、決して採れていないわけではないと思う。まず全体の個体数を減らすために、今年度だけというよりは、もう少し長い目で見て、その上で最も効果的な施策を検討いただきたい。 次に質問だが、資料2−3の再解禁後の2日間程度は捕獲効率が上昇するがその後急に下がるとの記述がある。まだ詳しいデータとしては出ていないと思うが、この捕獲効率がハンター1人当たりという意味だとすれば、実施した効果があったのではないかと思われるため、その点は見守りたい。また、週末から始めているのだとすると、週末に効果があるのは良いことだと思う。ひょっとすれば2週間単位よりは1週間単位で変えるということも検討できるのではないかと思う。 3点目だが、羅臼町は狭すぎるというようなご意見があったが、これは世界遺産の隣接区域を超えた話になるかもしれないが、そうであるならばもうちょっと広い範囲での輪採制ということが必要であり、何か実現する方法はないかと考える。
  • 全く賛成だ。【】輪採制が昨年の年度が始まったあとに出てきたかも知れないが、本ワーキンググループでのML等で合意を得ながら進めていったことであり、それで良いのではないかと思う。本来であれば、北海道のエゾシカ検討委員会と世界遺産のシカワーキンググループは人員的には共通している人が多いので、同じ期間中にやってしまうということも視野に入れていただきたい。委員である我々の日程もタイトであり、実際に開催できるかどうか、5月に開催できるかどうかも含めて検討いただきたい。
  • 植生回復について確認だが、在来種のトウゲブキが依然として優勢であるということで、むしろ本来回復してほしいガンコウラン群落などが思ったほどではないという場合、柵の中であっても目的のためには、在来種であってもトウゲブキを刈り払うといったことを行ってよいのではないか。
  • 知床岬のシカ密度と幌別岩尾別のシカ子連れ率を見て少し違和感がある。知床岬では、昔はあのくらいの個体数に達すれば大量死などが起こったが、現在は高密度で留まっているようにも見える。別資料だが、幌別岩尾別の資料を見ると、密度効果のように子連れ率というか生存率がどんどん低くなってきている。これは違うことが起きているという認識でよろしいか。
  • IUCNからは、指標をしっかりせよという話があった。植生の指標は、今後作るということで、我々としても仕方がないと思うが、エゾシカに関しては個体数・個体数指数とある。例えば、最初の行でライトセンサス等によるシカ個体数・個体指数の急激な増減は確認されなかったと書きながら、個体数指数自身はこの実行計画自体に全く載っていない。これは変ではないか。もちろん仮の段階のものであり、今後このような指数の出し方は改善すべきだということは当然書くべきだと思うが、少なくとも先ほど示していただいたライトセンサスデータで言えば、何らかの形で示される、あるいは参照できるようにしておくのがいいのではないか。
  • 先ほど私が申し上げたのは、費用対効果の分析はこの4地区を合わせて改訂していくべきだということだ。その理由は、知床岬において目標頭数を捕獲する事が今のやり方、特に死体を原則として回収するというようなやり方では極めて厳しいというような結果がもし出てしまったら、目標頭数を減らす事ができない。目標頭数を減らした上で植生が回復するかどうかは次の問題だが、目標頭数を減らす事すら出来ない計画をずっと続けていっても意味が無いわけだ。その意味において費用対効果の検証は毎年実施することは必要と思う。実際に目標頭数を減らした上で効果があるか無いかは確かにおっしゃる通り2、3年以上を要するかと思う。