MVP 500個体について質問

Date: Thu, 22 Jan 2009 06:59:47 +0900
【表記の最小存続個体数(MVP)の根拠について】私の理解を申します。
 人口学的MVP(親50個体)は人口学的確率性により、個体数が激減し絶滅するリスクが無視できない個体数です。実際にリスクがどの程度高いかは、生存率や繁殖率の環境確率性(世代間変動及び多回繁殖による世代重複の度合い)にもよります。有効個体数が50以上ならば、人口学的確率性はほぼ無視できます。
 遺伝学的MVP(親500個体)は「サイズ効果」により、中立遺伝子の遺伝子頻度が偶然(人口学的揺らぎと同じ)0になる可能性が高いというものです。これは分類群によりません。子供が多くてもだめ。かつ一夫多妻のような場合は実際に繁殖にかかわる雄と雌の数が問題で、その相乗平均が250以上となるでしょう。
 中立遺伝子の遺伝的多様性は有効個体数Nと突然変異率μで決まります。後者を無視すれば、個体数がどんなに多くても、多様性はサイズ効果により徐々に失われます。【突然変異があるときは】2倍体生物では2Nμ<1のときに遺伝的多様性は(徐々に)減少します。μが1世代あたり10^-3【とすれば】、遺伝的MVPは500ということになるでしょう。
 ここまでは数学的に厳密な話です。
 しかし、遺伝的多様性が失われても、直ちに絶滅にいたるわけではありません。環境変動に対して脆弱になるかもしれないという程度のものです。また、本当に重要なのは中立遺伝子ではなく、表現型に差が出る遺伝子です【】。
 また、2つの分集団があって、1世代に0.5個体でも恒常的に交流があるなら、それは全体で1つのメンデル集団と見なせるという理論があります。
 結論として、遺伝的MVP以下では、ヘテロ接合度などで計る遺伝的多様性が損なわれていくと思われます。だからといって、直ちに絶滅するわけではありません。さらに、今絶滅しなくても、将来も安泰とも絶対だめとも言えません(チータのように、その後も安泰だった例はいくらでもありますが)。
 先日ある人と議論していて、「最小有効個体数」という言葉が出てきてました。上記で言う有効個体数(Effective Population Size=親個体数が変動するとき歯その調和平均。性比に偏りがあるときも同様)と、いわゆる最小存続個体数(Minimum Variable Population)は別の概念です。一緒に出てくるので、混乱するのでしょう。