スクデブ氏との懇談会

昨日、Sukhdev氏(COEで勉強会を開いた生物多様性条約ボン会議でTEEB=The Economy of Ecosystems and Biodiversityの編者)との懇談会に参加しました。【参加者が】こんなに少ないとは思わなかったので、貴重な機会でした。以下、私から参加者へのメールの抜粋です。ご参考まで。

Date: Wed, 10 Jun 2009 08:48:41 +0900
 日本人からのの質問
1 生物多様性が高いとどうして生態系サービスが豊かになるのか
2 CO2排出に比べて生物多様性の計り方は主観的だ
 1は経済学者が答えることではないと思います【】。
 2は、むしろCO2排出も客観的ではないと仰った点に驚きました。客観的に計る手段なら、同じように生物多様性でもできます(条約でできているわけではありません。それをこれから作る当事者への質問でした)。問題は社会合意です。私は現在のCO2排出削減目標が合理的な方法とは必ずしも思いませんが、合意されれば力になります。
 国内では、生物多様性を重視する声は海外以上に少数派です。しかし、CO2規制も欧州より不熱心で、だから日本は乗り遅れているのでしょう。生物多様性でも同じ徹を踏もうとしている【】ということでしょうか。

 この会合を契機に、国内の取り組みもより横断的に、かつ戦略的に進むとよいと思います。IGESに大いに期待しています。

Date: Wed, 10 Jun 2009 09:25:51 +0900
>> 【CO2排出のように】客観的に計る手段なら、同じように生物多様性でもできます
 例として、我々(経済学者岡敏弘さん、数理生態学者松田、植物学者角野康郎)の論文を紹介します。これは生態系サービスを計るものではなく、生物多様性(特に絶滅危惧種を念頭に入れましたが、普通種の乱獲にも使えて、後者のほうがしばしば大きな負荷になります)を計るものです。これは客観的といえるでしょう(元の植物データベースそのものがアンケート調査ですが)。
 愛知万博の環境影響評価の際に開発、提案したものです。当時の通産省は大いに乗り気になってくれましたが、残念ながら、日本の政策には生かされず、愛知万博大阪ガスLNG基地問題で生かされただけでしたね。

Oka T, Matsuda H, Kadono Y (2001) Ecological risk-benefit analysis of a wetland development based on risk assessment using `expected loss of biodiversity'. Risk Analysis 21: 1011-1023.

関連論文
Matsuda H, Serizawa S, Ueda K, Kato T, Yahara T (2003) Extinction Risk Assessment of Vascular Plants in the 2005 World Exposition, Japan. Chemosphere 53(4): 325-336.
紹介している書籍
松田裕之(2000)環境生態学序説:持続可能な漁業,生物多様性保全,生態系管理,環境影響評価の科学,共立出版 1-211
岡敏弘 環境政策論 岩波