生物多様性条約、2010年後の目標への意見

Date: Sat, 17 Oct 2009 11:35:01 +0900
 昨日は自分の話とともに、急遽、「日本代表」として生物多様性条約、Post2010目標を議論するパネル討論に登壇しました。日本政府の主張はそれなりに反映されそうです。また、具体的な指標(温室効果ガスの排出量のような指標)はほとんどできていないで、「日本で議論している」などと書き込まれているので、期待も大きいのでしょう。
 私が主張したのは、以下の通りです。皆さんもぜひいろいろ考えてみてください。

  1. 2010年目標(生物多様性の喪失速度を顕著に下げる)は達成できなかったという総括は正しい。しかし、2020年目標は、達成できる現実的な目標を考えるべきである。達成する見込みのない条約は力にならない
  2. 以前は自然保護を経済性を度外視して主張していたが、今は生態系サービスと言う功利主義で全部説明しようとしている。西洋人は極端から別の極端に行きたがるが、中庸がよい。生物多様性は経済価値を生み出すとともに歴史的遺産であり、先祖が持続可能な関係を築いてきた指標でもある。生態系サービスと生物多様性は別個に評価すべきである。
  3. だから、温室効果ガス(GHG)のような一つの指標は無理だが、指標は総合的に2,3個にまとめたほうが良い(Ecological FootprintとLiving Planet Indexがよい)。その上で、そのComponent(前者は農業、漁業、森林、エネルギなど、後者は絶滅危惧種と地域の多様性)を評価すればよい。指標がたくさんあっても、気候変動のような政治力は発揮できない。また、EFなら、逆に将来は気候変動も包括できる。
  4. GHGは地球規模の問題で、日本の排出量を増やして南アで減らすということにも意味がある。しかし生物多様性はそうではない。地球規模の指標を作りながらも、地域ごとの生態系を守る仕組みを考えるべきである。
  5. 途上国視点に立つ政策が良い。今後の人為的絶滅を0にするという原案は非現実的で、たとえば9割削減とかのほうがよい。それなら先進国は損失0になるだろう。
  6. 外から資金を投じて自然を守るというのはそれほどむずかしいことではない。大切なのは、その地域の人が経済的に自立して、その地域の自然を守る仕組みを作ることである。
  7. 来年COP10が開かれることで、日本では100人以上の生物学者が集まってメールで議論する体制ができている。残念ながら日本語で議論しているが、その意見は我々が国際社会に紹介したい。