風力発電 環境影響評価の迅速化とは

 本来、スクリーニング程度でよい(不可逆的な影響が大きいとは思えない)風発事業が多々ある中で、EIA【環境影響評価】を義務付けられてしまった。だから前倒しをして「早く」建てる(手続きの簡易化ではなく早めるだけ。むしろ費用と手間はかかる)というのが今の政策です。これはもう動かせない。前倒しはかえって合意形成がこじれる場合が増えると懸念される(本来、EIAは合意形成を促し、「初めに事業ありき」でなくする手続きだ)が、手戻りをできるだけ避けたいというのがEIA迅速化【計画書に対する意見照会を待たずに調査を始める前倒し調査】の趣旨だと思います。それには、順応的管理の視点が欠かせません。
 保護区など立てるべきではない場所を選定してアボイドマップを作るといいます。宗谷岬にたくさん建っていますが、これは不適地ですか。「渡りの中継地点」としてはより重要なところはあるだろうが、渡りのルートとしては日本の最重要地点だと思います。リスク管理というのは、避けるべき場所を先に決めることではなく、どの場所がどの程度問題かを定量的に定めることです。
 しかし、宗谷岬に立てるような場合は、前倒しはしない手もあります。手戻りしそうな案件を見極めることは重要。
 ほとんどの場合、鳥衝突個体群リスクは可逆的な影響です。それを避けるために必要なら、希少鳥類が何度も衝突するような風車は1基単位で撤去すればよい。採算性を考えても、10〜20年たてば撤去可能です。損失補填できれば1年でも撤去できる。追加保全措置を担保するなら、鳥衝突リスクについては、合意はずっと楽なはずです。だから順応的管理が重要なのです。