知床世界遺産にIUCNが課した重く具体的な勧告

Date: 2005/05/31 11:23
皆さん
 私としてはIUCNに感謝していますが、課せられた勧告は、かなり具体的で、きわめて重いものです。
【新聞報道にもあるとおり、登録後に実施することが勧告されている措置として

  1. ・・・地図等を世界遺産センターに送付すること。
  2. 登録後2年以内に、海域管理計画の履行の進捗状況と遺産地域の海洋資源保全効果について評価するための調査団を招く・・
  3. 2008年までに完成させる海域管理計画の策定を急ぐこと。その中では海域保全の強化方策と海域部分の拡張の可能性を明らかにすること。
  4. サケ科魚類へのダムによる影響とその対策に関する戦略を明らかにしたサケ科魚類管理計画を策定すること。
  5. 評価書に示されたその他の課題(観光客の管理や科学的調査などを含む)についても対応すること。
  • なお推薦書の準備に際しての公衆参加や、極めて優れた推薦文書の準備、保全管理の強化を求めたIUCNの勧告への効率的な対応などの過程について高い評価を受けたという。】

【中略】海域管理計画の策定を急ぐことは、私も主張していたことです。エコツアーなども含めた包括的なものは、この期限とは別と理解できます。
 しかし、海域拡大の可能性【】と言うのは、これまた【登録海域拡大を求めたIUCNの2回目の意見に続いて】あからさまな要求で、対応に苦慮されると思います。私としては、以前紹介した、京都ズワイガニ漁業MPA海洋保護区】拡大の前例を踏まえることを強く勧めます。つまり、初めは狭い海域から始めて、効果を漁業者が納得しながら増やすというものです。今までの経緯から、拡大には漁業者の合意が必要です(拡大の「可能性」と書いたIUCNは、本当によく理解しています)。
 ただし、それには、2,3年で検証に耐えうるような「海域管理」を実施しないといけません。形だけの登録海域拡大では、納得させる材料もまた、生まれないのです。京都の事例も【そう】だったように、拡大だけでなく、縮小の可能性にも言及し、3年間の実験としてMPAを設置することを提案します。
 もう一つのダムの提案は、IUCN2度目の意見では明示的でなかったものであり、これまた大きな重荷です。これは河川WGの判断されることですが、科学委員会としても早急に見解と解決策を取りまとめるべきだと思います。
 IUCN勧告への効率的な対応の過程も評価いただいたとすれば、科学委員会としても、努力した甲斐がありました。今後も、この努力を続けたいと思います。