アクアネット連載「入門・リスクの科学」最終回

Date: Thu, 20 Oct 2005 23:49:53 +0900
松田裕之です。
「アクアネット」という水産系の雑誌に連載記事を書いています。その最終回の原稿【の一部】を下記に紹介します。
 政府や専門家の役割は、リスクの前提を学問的に吟味し、より正確に様々なリスクを評価することであり、それを社会に伝えるとともに、社会的に必要な範囲でリスクの発生源を規制し、存在するリスクについての適切な情報を提供することである。何がどう適切か、またその適正を判断する基準を議論すること自体も科学の対象であり、最近特に薬学関係では、規制科学と呼ばれる(出典はウェブサイト参照)。
 科学者は利害関係者ではない。しかし、将来生じるかもしれない問題点を列挙し、管理(対策)の必要性を吟味し、利害関係者の間の対立点や協調点を整理したうえで、実行可能な管理計画を立案するために貢献できる。第5回と第6回で紹介した知床世界遺産をめぐる合意形成では、科学者が行政と漁業者の間に入り、論点をまとめたと報道されている(図1)
 石垣島西表島の間に広がるさんご礁(石西礁湖、図3)では、過去にオニヒトデが大発生した。そのときにはオニヒトデの高密度地域で手当たり次第にオニヒトデを駆除したが、焼け石に水で、十分な駆除効果を挙げられなかった。今再び大発生の兆しがある。今度は高密度地域ではなく、むしろ低密度地域を死守することが検討されている。これも、駆除努力の限界を踏まえた実現可能で有効な対策を科学者が検討した結果である。
(以上抜粋)