生物多様性保全の根拠 RSBS報告書訂正希望

○○様
サステナビリティの科学的基礎に関する調査(2005)のRSBS報告書、送付ありがとうございました。
 よく確認できなかったのですが、私が「友人との付き合いで、損得勘定のもと、役に立たない人をすべて切り離すことはしないであろう。しかし、生物とのつきあいに関しては、人間は自分たちにとって有益でないというだけで、そのような生物を絶滅に追いやっている」と述べたと187ページにありましたが,これは事前原稿にはなかったと思います。私の真意は「友人との付き合いで、損得勘定のもと、役に立っていることが証明できない人をすべて切り離すことはしないであろう。しかし、生物とのつきあいに関しては、人間は自分たちにとって有益であることが証明できないというだけで、そのような生物を絶滅に追いやろうとしている」ということです。*1
 拙著「環境生態学序説」(2000、共立)71ページには以下のように書きました。

 結局のところ,生物多様性を守れと言うのは,「友達をたいせつに」という以上の論理ではない.多様性を守れと言うのは生態学の命題ではなく,あくまで人間の価値観である.一人一人の友人知人は,自分に役立つかあだを為すか,必ずしもはっきりしない.しかし,おそらくその大半は直接間接に恩恵をもたらしているはずである.利害不詳の友人知人と片っ端から縁を切っていったら,人間関係は成り立たないだろう.今,人類は生物と言う友人を毎年数千種ずつ失っている.その事態を見過ごしていては,たいへんなことになるであろう.
 わからないというだけではおもしろくない.むしろ,直観に反する例を知ることで,目から鱗を落とすことができる.生態系の間接効果は,常識や直観を越えた意外な結末をもたらすことがある.生物多様性を軽視することの戒めとして,そのような逆説的な例をいくつか紹介しよう.

*1:2005年11月15日付で、ウェブ上に訂正版が載せられたそうです。迅速な対応に感謝します