自然の権利運動について

Date: Wed, 26 Feb 2003 11:19:19 +0900(2年以上前の書簡だが、未公開だったので公開する)
2003年2/25に外務省が開く捕鯨問題のシンポジウムに、捕鯨に理解を示す立場から、自然の権利運動の創始者であるクリストファー・ストーン氏が講演されることを知りました。
 奄美裁判では、少なくとも一審で、森林法に基づき、県によるゴルフ場の許可処分が間違いだったと事実上認めていたと思います。しかし、それを訴える原告適格が現行法ではない、それが法制度として問題だとまで書いていたと思います。大変説得力がありました。
 正直に言って、控訴した方がよかったかどうかも、まだわかりません。一審判決のまま確定した方がよかった気もします。25日の説明では、控訴審では奄美の文化の問題を争いたかったということですが、それが達成できたかどうかも、わかりません。しかし、少なくとも、私個人は控訴によって皆さんに深く関わることができました。
 鬼頭さんの社会的リンク論は、【自然の権利運動の】日本独自の変容だと仰いますが、私は、マルクス疎外論とよく似ていると思います。
Date: Wed, 26 Feb 2003 11:19:19 +0900
○○様、皆様
8時過ぎまで【クリストファー・】ストーン氏と(新聞記者と、彼を捕鯨問題に引き入れた方と)刺身と酒を楽しみ、彼を送ったあとも、深夜まで飲んでいました。(二日酔い)
 【最後の質疑応答は】は、わが意を得たりというものでした。会場から「予防原則についてどう思うか」と質問があり、ストーン氏が「懐疑的だ。予防原則を語る人々は、リスクマネージメントなど知らないのではないか。FAOの漁業に関する報告(SOFIAのことだろう)の2000年?版がでているが、よくかけているので、参考にしてほしい」というようなことを言っていました。 彼が、予防原則に懐疑的で、リスク便益評価を推奨するとはまったく予想外でした。わが意を得たりという思いです。
 日本における「自然の権利」の「変容」とは何かわからなくなりました。ほとんど、ストーン氏の思想そのものと変わらないと思います。「樹木の当事者適格」で彼が認めているのは、あくまでも自然の「法的」権利ですね。読み足りなくて恐縮ですが、人間中心主義からの脱却のようなことを、彼は、どこかで言っているのでしょうか?

 松田さんによれば、ストーン氏はクジラには一切触れずに話しをしたようです。

 はい。持続的利用を考える聴衆を意識して、持続的利用の費用便益の問題と生物多様性保全の意義をうまくリンクして話していました。捕鯨に理解を示すだけでは、この聴衆の前ではあまり意味がありません(配布された彼の以前の論文で十分です)。まさに、私の講義や拙著「環境生態学序説」の論旨と通じる面が多く、一人で頷いていました。
 なお、先日英文を紹介したストーン氏の捕鯨問題に関する論文Summing Up: Whaling and Its Criticsの和訳が参加者に配られていました。希望者はお知らせください。ただし、英文も見たほうがよいでしょう。