京都賞サイモン・レヴィン博士の受賞記念ワークショップ

Date: Sun, 13 Nov 2005 00:05:01 +1200
京都賞サイモン・レヴィン博士の受賞記念講演会(ワークショップ)に参加しました。
 今日のワークショップは下記のような題名でした。企画者の巌佐さんは基礎科学・生命科学部門の受賞者であるサイモン・レヴィンが社会経済学的課題について話すことの意外性を強調されていました。私は彼の講演に対する質問で、「私(と巌佐さん、山村さん、重定さん)の恩師だった寺本英さんは、いつも『(生態学の)次は宗教(を研究する)』といって我々学生を不安にさせたものだったが、レヴィンさんの今日の話には社会経済だけでなく、モラルの話も含んでいる。あなたの学生は、不安に感じていないだろうか」と質問しました。
 学生が不安に感じているとしても言わないので、レヴィンさんはわからないと答えていましたが、環境問題を考える際にモラルの話が不可欠であるというような答弁をしていました。寺本さんが生きていれば、膝を叩いて喜んだのではないかと思います。Princeton滞在中の○○さんには、ぜひ彼の学生にこの逸話を紹介して反応を見ていただきたいと思います。
 あとで長老の○○さんからは、「(私の)質問の答えをはぐらかされたな」といわれ、若手物理学者の○○さんからは「僕も同じ質問をしようと思っていた」といわれました。私がレヴィンさんの「持続不可能性」(文一)の書評を書いたとき、私は彼が「七、信頼関係を築け。そして八、あなたが望むことを人にも施せ」という戒めを述べたのに対し、これら最も説教臭い(これらの戒め)も、根拠のない付け足しではない。それらは、アクセルロッドの『複雑系組織論』(ダイヤモンド社)が解き明かしている。後者は環境問題を論じた本ではないが、十人十色の価値観を持つ人類社会をうまく機能させる手引き書である。本書にも、生物を例に相互利他性の理論などが紹介されている。環境は一人では守ることができない。社会全体の合意と意欲が必要だ。環境を守る処方箋を探るために、ぜひ、この二冊をともに読むことを薦める」と述べました。
 彼は社会規範の形成の力学については数学的に研究していますが、どんな規範がよいか を直接研究していません。しかし、彼の今日の講演には(社会規範の)善悪が頻繁に論じられていました。我々日本生態学会の「科学者の適切な役割」の議論を、彼とも共有する必要がありそうです。