Date: Thu, 1 Dec 2005 11:02:44 +1200
【S先生】が言っているのは、いわゆるRicker型、Beverton-Holt型の再生産曲線に対する疑念であり、むしろ「親と子の関係はほとんどもう直線とみなせてしまう関係にあって、その直線自体が環境条件によって上下にシフトしているようだ」ということだと思います。その場合(環境変動による非定常性を考慮)でも、最大持続生産量(MSY)概念を拡張した方針(たとえばConstant Escapement=漁獲後の資源量を一定に保つ方針)は理論的に導出されます。
しかし、資源量推定誤差、再生産曲線(の環境依存性)の不確実性を考慮すれば、MSYは未知(unknown)と考えるのが妥当であり、さらに種間相互作用を考えれば、マグロのMSYはイワシの漁獲量に依存するはずです。生態系全体から得られる持続的収穫高を最大にする解は定義できますが、これは種の共存を保障しない(たとえばクジラを根絶してマグロを採るのが「最適」ということになりかねない)、今後の漁業の好ましい理念にはなりません。
いずれにしても、標語としてMSYを掲げることは不可能ではありませんが、有効な管理方策とはいえないと思います。