11.25京大生態研センター研究集会

生物多様性研究の新展開:静から動へのパラダイムシフト」, 2008年11月25日
最大持続生態系サービスと順応的生態系管理:
http://risk.kan.ynu.ac.jp/matsuda/2008/080527NIE.ppt
 古典的な水産資源管理理論は対象魚種から得られる漁獲量を持続的に最大にすることを目指していた。しかし、生態系は生物資源以外にもさまざまな生態系サービスを人間に提供し、その価値は漁業収益よりはるかに大きいだろうといわれている。そこで、生態系サービスを持続的に最大にする漁獲方針を目指し、そのきに得られる利益を「最大持続生態系サービス」(MSES)と呼ぶことにする。漁業収益は漁獲量とともに増えるが、調節サービスは資源量に依存する。過程誤差を含む場合と含まぬ場合の単一魚種系、多種系におけるMSESを数理モデルから求めると、漁獲努力量は、MSYに比べて常に控えめになることがわかった。
 最大持続生産量(MSY)理論は,不確実性、非定常性、複雑性を考慮していない。それに代わり、継続監視によって漁獲量または努力量を見直す順応的管理が推奨され、陸域も含む生態系管理にも国際的に推奨されるに至っている。しかし、単一種資源管理と異なり、生態系管理において順応的管理が機能するという理論的保障はない。被食者捕食者系では、捕食者を漁獲する場合には順応的管理は有効に機能する。被食者を漁獲する場合には、順応的管理は成功せず、捕食者の絶滅を招いたり、本来安定していた資源の不安定化を招くことがある。このことから、生態系の順応的管理は必ずしも万能ではなく、生態系の特徴を理解した上で見直し方法を考慮すべきである。
世界水産学会議でも同様の話をします)