生態リスクマネジメント理論4/19

Date: Fri, 21 Apr 2006 22:08:17 +0900
生態リスクマネジメント理論 受講者各位*1
【】 来週は 「健康リスクと人間の寿命(生命表解析) ゼロ本49-62 」です。スライドは使いませんが、計算のためのExcelファイルを
http://risk.kan.ynu.ac.jp/matsuda/2004/ecology.html
http://risk.kan.ynu.ac.jp/matsuda/2004/ecology2v2.xlsから落手してください。興味ある方は事前に計算を試みてください。

■IUCNのRedlistの分類で評価されていない種というのは地球上における種のどのくらいの割合なのか?
>これまでに人間がその存在を認識している生物種は生物種全体からすればごくわずかに過ぎません。IUCNのRedlistで評価されているのは、そのごく一部のうちの3%程度です。(サステナビリティの科学的基礎に関する調査報告書p172 http://www.sos2006.jp/houkoku/index.html

■ENの基準を1つのみを満たしている生物と複数満たしている生物を同等に扱うのはおかしいのではないでしょうか?
☆これはリスクの確からしさの話であり、リスクの高さとは別です。この違いを良く理解してください。

予防原則は必要不可欠だとは感じましたが、一部思いこみで誤用されているということでしょうか?
予防原則を適用する際の明確な(定量的な定性的な)基準がないために、過剰な対策がとられる場合もあるということです。

■スライド22で、「all factors」というのがあるのですが、なぜこれよりもバイクのリスクが高いかが分からなかった。
☆分母が違います。全死因は全人類を分母とし、バイクはライダーだけが分母です。これは他のリスクでも同様ですから、注意してください。

■今後例えば、50年、100年後の目指す自然環境がどのように今後描かれていくのか、気になるところでした。
☆これは答えられませんね。

■個体数または減少率どちらかがだけがわかるという種は多いのですか?個体数が少ないと何かのきっかけですぐ絶滅しそうな気がします。
>減少率は相対的な値で判断できる(統一的な調査手法を使えば、相対的な評価が可能)反面、個体数は絶対的な値が必要となるため、減少率を推定できる種の方が多いのではないかと思います。例えば、去年に比べて電灯に飛んでくるカブトムシの数は少ないなぁ(去年に比べ減ったのではないか)と判断することはできますが、じゃあカブトムシの個体数は?と言われたら、分からないということに似ていると思います。

■保守的な前提について乱数を引いて変動を表現するとき、より悪いシナリオの目が出やすいような細工をすることはありますか?
☆それでは詐欺です。鉛筆をなめるとは言いましたが、どう舐めたかは明記しないといけない。リスクは 発生確率、その被害の重篤さ、それを計算するときに用いた仮定(シナリオ)で定義されます。

■type-Ⅱ errorを重視しすぎて、色々な対策をとってしまうと、type-Ⅰerrorになってしまうのか?それとも色々な対策をとること自体がtype-Ⅰerrorになるのか?
>前者の質問は、予防原則という名の下にあまり効果のないあるいは過剰な対策をとってしまっている例にあてはまると思います。対策の必要性とその効果を吟味せずに色々な対策をとることもtype-Ⅰerrorになるのでしょう。

RDBについて、紹介された判定基準は1994年のもので、それ以前の基準とどのように変わってるのか?
☆紹介したのは2001年のもので、1994年から若干変更しています。さらにそれ以前は、定性的に評価され、客観的基準ではありませんでした。

■「例え、管理に失敗しても半世紀は大丈夫」のグラフの見方がよく分かりませんでした。上下の曲線はどうとらえるとよいのでしょうか?
☆これは確率過程における95%信頼区間です。100回のシミュレーションのうち95回はこの範囲に入る

■「例え、管理に失敗しても半世紀は大丈夫」のグラフの曲線部分はどの程度信頼できる幅ですか?この曲線には超環境変動は入っていますか?入っていない場合にそれを組み込むと、より短い期間で絶滅するのではないでしょうか?
☆前項参照
(以上)

*1:私の講義を知っていただくため、初回のみ受講者へのメールを公開します