再び残念なトド駆除枠の期中改定

日本でも、トドの捕獲頭数を増やす「期中改定」を行うなど、大変残念な事態が起きています。
http://d.hatena.ne.jp/hymatsuda/20070815
http://d.hatena.ne.jp/hymatsuda/20081007

今回は以下の期中改定を行いました。
PBRを従来の227頭から284頭に大幅に増やした。
採捕数(駆除数)の上限を120頭から144頭に増やした。

 そもそも、トドの駆除数をPBR(生物学的潜在除去数)に基づいて決める際に、以下の問題があります。

0.幸いにも、近年トドは漸増傾向にある。これは駆除数を116頭に制限したことも関係するだろう。したがって、今以上に駆除を制限する必要はないと思われる。
1.しかし、漁業被害対策として、駆除が本当に有効という知見はない。漁業者の心情としては理解できるが、駆除が有効な被害対策とはいえない。
2.トドオホーツク個体群はIUCNのRedlistではEndangered、日本のRedlistではVulnerableであり、保護すべき対象である。日本がVulnerableと判定したのは近年回復傾向にあることを考慮したものである。その駆除数は水産庁が検討会を開いて毎年吟味している。今回の期中改訂はそのプロセスを踏んでいないものである。
3.PBRとはすべての人為的死亡数の上限だが、混獲数の正確な報告がない。混獲数が明らかにできないうちに駆除数を増やすことは国際的な批判を浴びるだろう。
4.日本に来遊するトドは閉じた個体群ではない。日本側だけで駆除枠を設定している。ロシア側が保護しているものを、日本側だけで採ってよいとはいえない。
5.ロシア側の個体数推定値が増加しているからといって、来遊数がそれに比例して増えるという根拠はない。日本国内でも太平洋側と日本海側、オホーツク海側の来遊数が時代とともに変化したことは周知の事実である。
6.PBRを決める際に回復係数として0.75を用いていたが、Endangeredなら0.1を用いるべきであり、Vulnerableでも0.5を用いるべきである。0.75を用いた根拠にはVUであることと回復傾向にあることを考慮している。しかし、上記判断にあるように、これは回復傾向にあるという根拠を二重に用いていることになる。