温暖化が今世紀の中山間地問題に与える影響

Date: Fri, 13 Jul 2007 14:18:42 +0900
COEの皆様

今回の里山の話がどういう時間スケールで語られているのか僕がいま一つよく見えていないだけかもしれませんが、短期的対応に特化した話なのでしょうか?・・・
長期的対策を考慮に入れる際には、「平均的には温暖化する可能性が高い」という情報を利用しない手はありません。

 二つの議論(中山間地問題と温暖化)を重ねた提案がありました。
 まず、中山間地問題の時間尺度ですが、半世紀から一世紀後を見越したものと私は考えています。短期的(20年未満)には、中山間地を放置することは、生物多様性国家戦略にいう「underuse」の危機が進行するでしょう(それがはたして、多様性が一時的に減るかどうかは、酒井さんから異論がありました)。しかし、より長期(半世紀以上)的に見れば、回復する自然がかなり多いのではないかというのが私の最初の疑問でした。これについては、生態学者のMLであるJeconet上でも詳しい議論がありました。Underuseだけを過剰に見るべきではないという点は、ML(Jeconet)上でも理解が得られたと思っています。
 さて、半世紀単位となれば、当然温暖化の影響も考慮すべきです。2度上昇するかどうかは別として、生物地理学的な北限や南限が移動し、かつ「生物が適応できる速さを超えている」という主張もあります。私は、後者はかなり怪しいと思っています。1000年単位で見れば温暖化の速さが適応限界を超えるという議論は成り立つでしょうが、今進んでいる温暖化と同程度の急激な(2度程度の)100年程度の気温変化は、今までにもあったと思います。そのときに植生が激変したという知見はあるのでしょうか?
 Vostok Ice Core Deuterium Data for 420,000 Yearsというデータベースがhttp://www.ngdc.noaa.gov/paleo/icecore/antarctica/vostok/vostok_co2.html にあります。たとえば550年前から400年前に2.9度上がっています。もちろんこれは南極の話で、世界あるいは日本の平均気温ではありません。が、1世紀で二度程度の気温変化は、氷河期を経なくても、1万年単位で見ればめずらしくないのではないか。(そのときに植生が変化したかもしれませんが)
 いずれにしても、地理分布は変化すると思います。ただ、中山間地の荒廃と回復を考える場合、温暖化の影響がどこまで具体的に重要かというと、一般論としてはあまりイメージがわきません。皆さんいかがでしょうか?ある地方に限った話でもよいですから、ご存知でしたら教えてください。