地域問題への訪問型の研究者とは

Date: Wed, 30 Jul 2008 17:31:56 +0900
 NZネルソン市より松田です(嵐が来て全便欠航。身動きとれず)
 よくわかりませんので、的外れならお許しを

  • 訪問型とレジデント型(私はカタカナは好きでないのですが、たぶん、日本語で言えない気持ちをこめているのだと思います)というよりは、単に基礎と応用(実学、問題解決型)の差の部分もかなり含まれていると思います。
  • 科学者がStakeholderになるのは 私は気が進みませんが、その意味では私は訪問型研究の典型かもしれません。それでも(それだからこそ)、地元が合意できない解ではすまされません。
  • 合意形成をつかさどる人間が「レジデント型研究組織」のミッションという意味だとすれば、それは少し違うと思います。科学者は論点を整理したり、Globalismに翻訳することはできるかもしれませんが、地元のLeaderや長老になれるわけではないでしょう。

 おそらく、【地域に根ざしたレジデント型科学者の必要性という】問題提起は、一流の科学者が聞いたら科学の発展において当然のことばかり書いていて、何が地域環境学の特徴かがわからないというかもしれません。私はそれでもよいと思う。つまり、自分の唱える(普遍的な)学説を自分でも消化していないので、地域にあわせて仕立てられないという「学者」が多いのだと思います。科学の知識は普遍的であり、建前は価値観から独立しているのだから、本来は地域の価値観と乖離するはずはない(反捕鯨が国際常識だといえば当然乖離するが、理由を突き詰めれば、それぞれの地域に説得力ある「自然保護」に行き着くはずです)。地域の研究成果を学界で評価させるためには、その成果を普遍化する必要がある。その力がないから評価されない。これは地域環境学に限ったことではなく、どの学問のどの成果も同じこと。とっても面白いことをやっていながら、しょぼい論文にしかできない人はたくさんいます(私もいつも自分が歯がゆい)。この普遍化に意味がないとは思いません。それは地域にとっても大きな力になると思います。

私の教訓を紹介します。
1) 知床世界遺産のIUCN調査団報告書
 「調査団は 地域コミュニティや関係者の参画を通したボトムアップアプローチによる管理、科学委員会や個々の(具体的目的に沿った)ワーキンググループの設置を通して、科学的知識を遺産管理に効果的に応用していることを賞賛する。これらは、他の世界自然遺産地域の管理のための素晴らしいモデルを提示している。 」http://www.rinya.maff.go.jp/j/press/hozen/080605.html これは、日本の漁業の持続可能な側面を英語でしっかり説明したからです。批判もたくさん貰ったけど。トドの食用批判以外は想定内。