サンマはいつまで豊漁か

高知大学DCセミナ−*1
日  時:平成20年9月26日(金)15:00〜
場  所:黒潮圏仮施設2階(物部キャンパス)
講演題目:「サンマはいつまで豊漁か:−生物の数の不思議−」
サンマはいつまで豊漁か −魚資源の大変動と環境に優しい漁業の未来−
松田裕之(横浜国立大学COEプログラムリーダー)
 昨年頃は、絶滅の恐れがあるとさえ言われるほど減っているマグロやウナギなどの高級魚の話題で持ちきりでした。原油高騰でイカ漁なども採算割れし、一斉休漁しています。1970年代のマサバ、80年代のマイワシは豊漁で、日本は世界一の漁業国でした。今ではたくさん獲れる儲かる魚種がなくなり、クラゲが増えています。サンマ漁は1990年代から豊漁ですが、値崩れして儲からず、その間に日本は世界一の水産物輸入大国になりました。
 マサバ、マイワシ、サンマは野生魚です。その数が時代とともに変わったのは、海の環境変化が原因といわれています。しかし、マサバやマイワシが減ってしまった後でもこれらの魚を獲り続ける乱獲が追い討ちをかけました。ですから、魚の資源量の変動は、自然現象の側面と乱獲の側面があり、片方だけ見ていては、野生の魚を上手に利用し続けることはできません。また、漁業は産業であり、儲けなければ成り立ちません。けれども、目先の利益にとらわれては海を壊し、跡継ぎに海の幸を遺すことはできません。サンマ漁船は大型魚だけを獲ることが可能な分離機を船に載せていましたが、小型魚が品薄になって大型魚が値崩れするという予想外の事態が置き、2006年に分離機を撤去しました。単に儲けるだけでなく、漁民がいるから海の生態系が守られるという側面も評価した、新たな漁業政策が必要です。本講演では、サンマなどを例に資源変動の謎を魚の生態、漁業、そして海の環境の側面から説明し、時代とともに豊凶を繰り返す魚を獲る「環境に優しい漁業」のあり方を論じます。

*1:2009年3月20日の日本生態学会公開講演会(盛岡)でも同様の話をします