科学論文でどこまで非公開情報を使えるか

Date: Mon, 22 Sep 2008 08:41:42 +0900
 科学論文でどこまで非公開情報が書けるかですが、まず、本来は根拠をできるだけ参照し、追試できるようにするのが科学の基本です。情報源を明かさないとすれば、それなりの理由が必要です。
 これはジャーナリズムとは決定的に違います。報道陣にとっては、情報源の秘匿は自分の首よりたいせつです。その違いが理解できていない研究者は、意外と多かったです。
 昨日私が紹介した例では、国が公共事業の固有名詞を秘匿する合理的な理由があるとは、おそらく科学者の誰も判断しないでしょう。しかし、民間企業名や地名、あるいは被験者の個人名などを伏せた論文は多々あります。これも常識です。これは、人権のほうが科学的根拠の明示よりも優先されるからでしょう。しかし、その場合、専門家集団にさえその実態が明らかにされるべきではないかといえば、それも違うでしょう。活字で公表しなくても、プライバシーなどを損なわない形ならば、専門家が追試できる状況にあることが必要だと思います。
 希少種の生育場所などはこの例です。自分の山のマツタケの場所とは違い、信頼できる専門家の間では相互に開示できるものです。

Date: Mon, 22 Sep 2008 09:01:08 +0900
 もちろん、内部告発にしろ情報開示にしろ、情報提供者にどうそれを使うのかを説明し、同意を得るべきです。これは(まじめな)報道人ならやることです。その場合、使い道が新聞や週刊誌ネタとは違うということを十分に理解してもらう必要があるでしょう。 どちらかといえば、臨床医の症例報告に近いものです。

Date: Tue, 23 Sep 2008 13:54:39 +0900
 コンサルタントと弁護士の違いはよくわかりません。弁護士も必ずしも社会正義に立っているとは言えない(依頼人の個人的権利を守るための助言をする)と思っていました。しかし、両者と学者の立場の違いは、よくわかります。 また、報道人(ジャーナリスト)の立場もこれらとは違うでしょう。
 有識者委員会などの議論をどこまで口外できるかについては、きっとどこかに有識者委員会制度の歴史的原型があるのだと思いますが、私は知りません。 明らかに取扱注意と書かれた資料が出回った場合は、守秘義務があると思います。また、外交問題有識者の場合、通常、外務省に対して守秘義務を守る誓約書を書きます。それ以外の場合、事務方からよく言われるのは、 「(取材などに応じて何をしゃべるかは)有識者個々人の良識にゆだねられている」ということです。しばしば有識者の座長などが別途記者会見を開くので、私は、特に個別取材に応じず、座長に聞いてくださいと答えることがほとんどです。また、私自身の意見については、議事録案ができた時点で、どんな意見を述べたかを公表することがよくあります(これが説明責任と守秘義務のバランスとしての私個人の「良識」です)。
 【科学雑誌の学術論文には客観的な結果のみを載せ、主義主張を載せるべきでないと言うのは】その通りだと思います。もちろん、それが間接的にある政治性を持つことは多々ありますし、それを当事者が期待している場合もあるでしょう。しかし、だからといって、あからさまに主義主張を持ち込むべきではありません。そのような論文は多くの雑誌で、修正を求められるか、却下されるでしょう。