「海の国立公園」新設をめぐる報道について 

Date: Wed, 17 Dec 2008 10:39:53 +0900
Wildlife各位
 下記の情報ありがとうございました。自然公園法の改正については中央環境審議会自然環境部会自然公園のあり方検討小委員会の中で検討されているはずです。しかし、このような「海域公園」の話は初耳でした。【この度、自然公園法が改正され、新たに「海域公園」を設けることとなったそうです。http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20081216-OYT1T00419.htm?from=navr
 この記事自体の信憑性と妥当性【が問題】です。読売の記事は情報源がわかりませんが、上記小委員会の報告書案を何らかの形で入手し、それを基にしているように見えます。私は当事者でないのでわかりませんが、このような制度の新設の話と、具体的な地名が同時に出てくるのは奇妙に思います。少なくとも、当事者(環境省)から地元にまず説明が行き、納得されているかどうかが問題で、その前に出てしまった記事ならば(私にはわかりません)、ボタンの掛け違いが生じ、少なからぬ負の効果が懸念されます。【】
 新聞記事を鵜呑みにするなというのは科学者だけでなく、市民の常識です。記者も裏を取ってから記事を書けといいますが、読者も、特に人に積極的に紹介するときには、裏を取ることがときには求められます。
 以前、やはり新聞記事で、知床の現場が大混乱に陥ったことがありました。http://d.hatena.ne.jp/hymatsuda/20050612混乱させるという意図を報道機関が持つならば、それは報道の自由です。しかし、いかにも私たち記者も環境を守りたいという態度で取材しておいて、この記事はないだろうという思いをすることは多々あります。
 今回も、知床は早くも混乱し始めているようです。おおごとにならなければよいですが。環境省と漁業者がこの間、どれだけ信頼関係を築けたか、わかるかもしれません。

Date: Thu, 18 Dec 2008 08:43:03 +0900
 報道内容の一部が誤りだとすれば、報道の自由とは言えませんね。報道機関も、裏を取ることと、その報道が社会にどんな影響をもたらすかをよく考えてほしいと思います(私もですが)。
 逆に言えば、報道人を選ぶことも重要です。私は以下のサイトにあるようにいろいろ取材前に注文をつけますが、相手が今までに書いた記事を読ませてもらうこと、場合によってはその記者の取材を受けた人から評判を聞くことが、一番の近道でしょう。http://risk.kan.ynu.ac.jp/matsuda/press.html
 よい報道人とは、必ずしも自分と同じ意見を書く人ではありません。取材してから予見を改めることのある人(ときとして、没原稿の多い人)が最も信頼できます。これは科学者も同じこと。自分にとっての「不都合な真実」と向き合える人が信頼できます。

Date: Thu, 18 Dec 2008 14:02:26 +0900
 念のために申しますが、今朝の私の投書は読売の記事を誤報と決め付けたわけではありません。「報道内容の一部が誤りだとすれば、」という仮定に基づいて書いています。
 読売新聞記事にある”環境省は、サンゴ礁や干潟など海の自然保護を強化するため、自然公園法を改正し、新たに「海域公園」を設ける。(中略)16日の中央環境審議会小委員会で法改正に向けた報告書案をまとめ、来年の通常国会への提出をめざす方針だ。” という部分は、16日の小委員会の議事要旨などが公表されれば、その時点で真偽が検証できるでしょう。
 最後に、”対象候補地としては、・・・などを検討する。”と書かれています。これも仮定に基づきますが、「制度の新設」と「具体的地名の検討」が同時に表に出ることがないという私の予見が正しければ、この部分は当分検証されないかもしれません。また、この報道自体によって対象候補地が変更になることもあり得るでしょう。主語を省略した未来形で書かれていますので、将来実際に対象候補地となるならば、誤報とはいえません。
 これを書いた記者が「裏を取った」かどうかは私にはわかりません。また、裏を取ったとしても、情報源は明かさない(命にかけても守る)というのが(科学者と異なる)報道人の鉄則ですから、それは公式には証明できないでしょう。