Date: Wed, 22 Jun 2011 15:04:53 +0900
・博物館等の資料がかなり失われたと聞いています。
・多くの【水産物】種苗拠点も失われました。外来種苗導入に慎重にというのとセットで言及いただきたい。 http://www.miyagi.kopas.co.jp/JSFS/INFO/sj-info_317.html
・原発避難地域での野生鳥獣の大発生と周辺への影響が危惧されています。突然変異の影響が個体群 の存続にまで影響するとは考えていません。むしろ前者の影響がはるかに深刻であり、チェルノブイリでも実例があります。その点への言及が必要でしょう。【】
・「カリウムと挙動のよく似た放射性セシウムは海洋生物に濃縮されますが、大型魚ほど濃縮率は高いことが知られています。」セシウムは魚などでの生物学的半減期が短く、この表現は誤解を招くと思います。水産物を食べない方向に世論を誘導するのは遺憾です。
・「カルシウムと挙動のよく似た放射性ストロンチウムは骨に蓄積されます。」これも、上位捕食者 の骨を食べる習慣はほとんどありません。引き続きモニタリングが必要ですが、今のところ、イワシ など骨が食される魚を含めて、大きな問題ではありません。
・現在、海洋中の放射性物質のモニタリングはJAMSTEC(文科省)主導で行われています。【】米国調査船による調査も始まっています。むしろ、情報の透明性が高くなるでしょう。
・予防原則に基づく【といいますが、】原発はともかく、放射線対策 については、原発のごく近くを除いて、私は順応的管理で十分だと思います(最初から30km指定すべ きだったという意見はありえますが、4月から拡大する必要があったかどうかは疑問です)。現在、 放射線リスクに関してはむしろ過剰な予防原則により、避難するほうがはるかにストレスによるリスクが高いと【】うわさされています。現時点では特に、学術会議議長の声明http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-d11.pdfのように、冷静な対応を求めることがたいせつでしょう。
・ご存知とは思いますが、事故時の対応は実際には【事故の前から】考慮されており、すでに文書にも記されています 。(むしろ、生態系管理で、このような明文化はあまり見たことがありません。「生態学に見習え」というのは不遜だと思います)http://www.nsc.go.jp/anzen/sonota/houkoku/houkoku20080327.pdfその想定を超えた事態が起こったということが問題です。「事故が生じた場合の事態を想定し、予防原則にのっとった判断が必要だと考えます」では、どう改めるべきかが抽象的です。
・(今動いているものをそのままに、定期点検後の)運転再開に慎重になれというのは、必ずしも合理的な判断とは思いません。【】全部即時停止、あるいはリスクの高いものから停止ではなく、定期点検後の再開反対という主張には、私個人は反対 です。逆に、浜岡原発停止の英断をほめてもよいのではないですか?
・【】上関原発反対は強調すべきです。
・短期的には火力を含めた代替エネルギーの増産が必要です。数年内の電力としては、風力と廃棄物 と中小水力と地熱と太陽光、太陽熱はきわめて実現性の高いものです。私としては、当面の代替エネルギーとして、風発を進めたいという気持ちに変わりありません。より長期的にはさまざまな可能性がありますし、上記のエネルギーもご指摘どおり問題もありますが、それらを抜きにして、原発の「 運転再開に慎重に」というのは、あまり意味がないと思います。
・私は、「食べて支援しよう」という運動を(私よりは遅いが)農水省が幟を作って行っていること を高く評価しています。これへの言及がないのも残念。
・他者を批判するだけでなく、自らも学界の一員として、今回の大惨事を未然に防げなかったことを 反省することが得策だと思います。http://d.hatena.ne.jp/hymatsuda/20110616(水産学会の声明【に反映】)。自分は何でも知っていた、という態度は、あまり好まれないでしょう。また、自分たちが何をするかという決意表明がありません。http://www.miyagi.kopas.co.jp/JSFS/INFO/sj-info_321.pdf 水産学会を参照。
(追加)
・「どんな天変地異に出会っても致命的な破局には至らないような道を歩む必要があります。」とい うのは情緒的です。【】「致命的」 とは何を指すのか、よくわかりません。
Date: Sat, 25 Jun 2011 08:38:29 +0900
生態系への問題は、被災者への影響に比べれば重要度は低いといえます。【被災者へのお悔やみや回復を第一に望んでいると述べずに】「いきなり、生物のことを考えろ」というのは、私に言わせれば、生態学の評判を下げるだけでしょう。
しかも、予防原則の中身はほとんどゼロリスクの追求です。【】どんな天変地異に出会っても致命的な破局には至らないことなど、(致命的の定義次第だが)不可能です。【】
Date: Sat, 25 Jun 2011 20:42:07 +0900
昨日の自主的勉強会で出た、最大の意見は「反原発を語ることと、今回の放射線リスクを煽ることは別である」ということでした。【】
今日の景観生態学会でも、野生動物の大発生の危惧は指摘されていました。【】原発事故の生態系への影響は、学術的な研究課題としてはもちろん大切ですが、行政的に対策を採るべきというほど大きな影響とは思いません。土壌生態系への影響については国大でもセミナーを行いました。もちろん影響はありますが、それほど深刻なものとは、私は思っていません。
もちろん、行政が調べていただけるならば、当事者としてはありがたいですが、この国難に際して調査の必須事項というつもりは、私はありません。学術的重要性から、海外から研究予算を獲得することもできるでしょう。