Date: Tue, 5 Feb 2013 18:53:39 +0900
1999年の鳥獣保護法改正には深くかかわっています。【末尾】は私が改正の説得のために参議院向けに書いた文書です。この後、【】付帯決議がついて「改正」されました。【そういえば、社民党まで法改正に賛成し*1、環境団体から怒られたみたいですね】
この辺の顛末は、下記の特集に載せました。環境省も、環境団体の方も原稿を載せています。【】
鳥獣保護法改正問題 (特集 鳥獣保護法改正問題) 生物科学 52(3), 129-131, 2001-01
そのほかの資料【】もあります。*2
また、【】奄美裁判で私が原告側で述べた意見はサイトにあります。
この原告たちが鳥獣保護法改正に賛成した私に意見を求めているところも、面白いところです。決して、二項対立ではありません。その後にでた鬼頭秀一・福永真弓編「環境倫理学」は二項図式対立を超えてという序章で始まります。
参議院議員 【】先生
前略 突然の要望書の送付につき、失礼いたします。
今国会では、「鳥獣保護法」の改正案が提出され、「特定鳥獣保護管理計画」の制度化について、審議されているとうかがっています。私は、生態系や農林業に深刻な被害を及ぼしている野生動物を、科学的・計画的に保護管理する必要性を感じています。
北海道では、エゾシカによる農林業被害、および生態系への撹乱が顕在化しています。そのため、北海道独自の取り組みにより、平成10年「道東地域エゾシカ保護管理計画」が策定され、ようやくエゾシカに関する科学的・計画的な保護管理が緒についたところです。私自身もこの計画に係っています。この計画の妥当性については私と北海道の研究者たちとの共同研究として学術論文(Researches on Population Ecology誌に印刷中)が公表され、保護管理計画全文の英訳は、北海道に滞在している米国人研究者の手により、ホームページ*3に公開されています。このような取り組みは、農林業被害や生態系の撹乱を回避するだけでなく、地域における人間と野生動物の共存のために欠かせないものと考えています。
このような地域の取り組みに際して、本来、科学的・計画的な保護管理を保証すべき役割である鳥獣保護法が、ときとして大きな制約になる場合があります。捕獲頭数の制限、鉛弾の問題などでは、地域に即した弾力的な運用が困難でした。およそ年15%の割合で増えつづけるシカのことですから、1日1人1頭という捕獲制限の緩和がもう1年遅れていたら、エゾシカの大発生問題は取り返しがつかない事態だったことでしょう。これから後も、鉛弾への規制が遅れたら、さらに大きな問題が起こる恐れがあります。
もちろん、行政と専門家のきめこまかい関与などを伴わなければ、国から都道府県への安易な権限委譲は鳥獣保護のうえで逆効果になる恐れがあります。日本生態学会自然保護専門委員会では、その問題点を指摘しつつも、法改正の動きは望ましいことと述べています。
先生におかれましては、野生動物の保護管理に対する地域の取り組みについてのご理解と、鳥獣保護法改正に向けて、環境庁の鳥獣保護行政の体制作りに対するご指導を賜りますよう、お願い申し上げる次第です。
草々
平成11年4月21日
東京大学助教授 松田裕之
*1:http://www.sangiin.go.jp/japanese/gianjoho/old_gaiyo/145/1450000.pdfの322頁
*2:野生生物保護管理の基本的な性格と特徴http://ecorisk.ynu.ac.jp/matsuda/1999/ma0827.html
*3:現在はリンク切れ