Date: Sun, 14 Oct 2007 14:29:45 +0900
やっと少し時間ができたので、取り急ぎ、漁業関係だけについて、第3次生物多様性国家戦略案への意見を下記サイトのように書いて、環境省に提出しました。本日が締め切りです。
意見募集 http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=8794
国家戦略案は http://www.env.go.jp/info/iken/h191014a/index.html
提出先は NBSAP@env.go.jp のようです(とてもわかりにくいです。ネット検索してもすぐには案文が出てきませんでした。)
http://risk.kan.ynu.ac.jp/matsuda/2007/CommentsOn3rdBioDiversity.html
第3次生物多様性国家戦略 案 に対する意見 松田裕之
- P54 「【漁業や】エコツアーなどにより地域の活性化に結びついている。こうした生物が豊かに生息する海洋では、水産資源等の現存量の科学的・客観的調査【に基づく持続可能な漁業とともに生物多様性を保全する取組が行われている。】」 ★地域活性化への貢献はエコツアーだけでなく漁業も同じ。ホエールウォッチングは鯨類への負担を招く場合もあり、他のエコツアーと比べても参加者に野生生物への注意を呼び掛ける項目が多いとは言えず、特筆すべき例とは言えない。科学的調査には水産資源以外の生物調査も含まれるべきである。
- P58 「・・・水産・林産物の流通を進めるMSC(漁業・水産物の流通)、FSC・SGEC(森林経営・林産物の流通)といった認証制度【などのエコラベル】が民間主導で取り組まれている例などの取組が始まりつつあります。」 ★(エコラベルはその他の取り組みもあります)
- P61 「例えば、ある企業では持続可能な漁業による産品であることを示すMSC【など】のエコラベルを貼った水産物を流通させています」
- P69 わが国は古来より漁業が盛んであり、漁業資源についての知見は充実しています。しかし、干潟・藻場・サンゴ礁などの生物多様性の保全に重要な沿岸域におけるデータ整備については、自然環境保全基礎調査を実施していますが、漁業対象種以外の海洋生物に関するデータは整備が不十分となっています。【我が国の研究者が提唱したNaGISAという沿岸底生生物の国際生物調査プロジェクトは、途上国でも可能な統一された調査項目と手法をもち、世界中で採用されるに至っています。さらに、漁業対象種についての長期にわたる基礎調査は、我が国が排他的経済水域の保全と利用を図っていることを国際的に主張する上で極めて重要であるにもかかわらず、その重要性が軽視され、削減される傾向にあります。このため自然環境保全基礎調査の一層の推進と関係各省間の情報交換を通じて、沿岸域の生物・生態系に係るデータをさらに充実するこのため自然環境保全基礎調査の一層の推進と関係各省間の情報交換を通じて、沿岸域の生物・生態系に係るデータをさらに充実するとともに、海洋全般における生物多様性に関する総合的なデータ整備については、各省間の連携など効果的・効率的な手法のあり方を含めて検討し、海域自然環境情報図の作成などを進めます。★卵稚仔調査などの基礎調査の継続・拡充は漁業だけの問題でなく、多様性国家戦略の中で位置づけるべきです。また、沿岸底生生物の基礎調査プロトコルを日本人(京都大学白山義久教授)が開発したことを、高く評価すべきです。
- P69 陸域と海域が接する沿岸域は、干潟・藻場・サンゴ礁・砂浜などの生物多様性の保全のため重要な生態系が形成される一方、人間活動の影響も受けやすく、陸と海のつながりを考慮しながら保全・再生を図っていく必要があります。このため、陸域との関係を踏まえた流域一体の取組や干潟・藻場・サンゴ礁・砂浜の保全・再生・創出を進めます。また、干潟・藻場・サンゴ礁の国立・国定公園と国指定鳥獣保護区への指定についてみると、藻場、サンゴ礁の4〜5割程度が指定されているもののそのほとんどは規制の緩やかな「国立・国定公園の普通地域」であり、干潟の指定は1割程度に留まります。また、「国立・国定公園の海中公園地区」の指定は、サンゴ礁などを中心に約3700haに過ぎません。このため、浅海域における保護地域の指定について充実を図るとともに、順応的管理の考え方のもとに漁業者の自主規制を基本として漁業資源の維持を図りながら海域の生物多様性の保全を目指す知床世界自然遺産地域海域管理計画の事例などを参考にしつつ、漁業をはじめとする多様な利用との両立を目的とした、地域の合意に基づく自主的な資源管理の取組【などの生物多様性の保全施策のあり方について検討を行います。海域の保護区についても、上記の国立公園(瀬戸内海、知床)、海中公園、海中特別地区、および水産資源保護法における保護水面などがすでに設置されているほか、愛知県イカナゴ漁業における順応的禁漁区の設定や京都府ズワイガニ漁業における海洋保護区の設置などが持続可能な漁業のために設置されている先進的な例があります。】 ★(原文では「(保全と)利用の両立を目的とした」が資源管理にかかるのか、海域保護区などの保全施策までかかるかが不明確であり、漁業以外の利用との両立なのかも不明確です。海域保護区も持続可能な漁業と保全の両立を図っている例があることを強調するほうが、論旨がはっきりすると思います。
(以上、よろしくご検討ください)