2005/08/21 06:57 付 電子書簡
○○各位【】
1)【○○さんの】第1の指摘は、生態系管理(Ecosystem Management=生態系全体の保全の一環として持続可能な漁業を考える)と生態系に基づく漁業管理(Ecosystem-based Fisheries Management=生態系のことを考慮した包括的な漁業管理)のどちらを取るかという問題だと思います。「多利用型統合的海域管理計画」という呼称は2004年11月5日の政府回答で用いられたもので、科学委員会が進言したものではありません。この計画名が漁業管理に見えるのでしょう。しかし、同回答には
- 推薦地内海域を世界自然遺産地域として保全するため、今後、同海域及びその周辺海域における持続的な水産資源利用による安定的な漁業の営みと海洋生物や海洋生態系の保全の両立を目標とする多利用型統合的海域管理計画を策定する。
- この管理計画においては、これまでの漁業関連のルールを基調として、主要な水産資源の維持の方策及び海洋生物・生態系の保全管理の措置並びにそれらのモニタリング手法、遊漁をはじめとする海洋レクリエーションのあり方等を明らかにする。」
とありますので、漁業管理だけを念頭に置いたものではないと思います。【】
・ブランド化は「管理をきちんとしている」(水産物認証制度MSCの発想)から出てくるものと考えてはいかが。もちろん味なども大事ですが、知床では適正利用による世界遺産の恵みというイメージが不可欠です。「定置網」からの矢印は不要でしょう。もちろん、サケマス類のブランド化は想定されますが、それは自主管理を通しての話だと思います。また、遊漁・エコツアーなどのブランド化も考えるべきでしょう。私は、このような「経営」のことまで海域管理計画で「視野に入れる」ことは、むしろ必要ではないかと思います。(自然再生事業指針の第26原則「この点では、自然再生事業の支援を行う経済行為や、その生態系から得られる資源を活用した経済行為を発展させることが大切である。このような取り組みは、自然再生事業の財政基盤を強化するだけでなく、新たな雇用を創出し、自然再生事業を支える人材を確保し、人と自然の持続的関係を発展させるうえでも重要である。」)【】
・「水産物需給の予想」の箱を新たに書きました。これは、スケトウダラ資源(供給)が中期的に回復しそうだとか、需要はどうだということを予想する必要があるという意味です。そうでなければ、総合的な管理計画は立てられません。【】
・漁家の増収対策としては、現時点で増収を目標とするよりは、基盤強化くらいのほうがよいと思います。遺産登録されると漁業が成り立たないという登録前の不満があったのに、「増収対策」を盛り込むのはあまりにも両極端すぎます。「痛みを全く伴わないとは言わないが、あくまで漁業者の将来も考え、漁業者の合意の下に管理する」というのが、海域WGでの議論だったと思います(道知事の公文書を我々にも読ませてください)。収入は短期的にも多いほうがよいでしょうが、持続可能な漁業ができなくてはいけません。代々漁業ができるような体制作りが重要だと思います。【】