1993年のPopulation Ecology(PE)の雑誌改革は、扱う分野を広げた印象を与え、かえって個体群生態学というIdentityがぼけてしまった。1990年代にはPopulation Viability Analysis、Adaptive managementなど、まさに個体群生態学のツールが生態学発展の重要な一翼となったにもかかわらず、PEはその発展に大きく寄与する媒体であったとはいえない。
上記の反省に立ち、10年後を視野に入れて、今後の個体群生態学の発展を担うことが大切である。そのためには、もはや「同好会的」性格の組織では限界があり、むしろ、今まで参加しなかった分野(医学など)に積極的に働きかける必要がある。
現状では生態学会内の植物さえ十分参加していないが、それを取り込むだけなら生態学会でやればよい。①生態学会の真部分集合として新たな個体群生態学を発信するか、②現在は生態学会にも参加していない分野に個体群生態学を拡大するか、さらに③集団生物学全般の発展を目指すかを選択する必要がある。
個体群学会の運営委員の多くが生態学会の全国委員を兼ねるようになったということは、個体群生態学が日本の生態学に根付いたことの現れであり、個体群生態学として十分成功したといえる。もはや、個体群生態学会員は生態学会の中で活動することでも、その目的の多くを全うできる。
いずれにしても、現状を継承するだけならば、この学会の使命は終わったという認識である。無理に続ける必要はない。しかし、この学会にはPE誌や会員のつながりなど、豊富な資源がある。その有効利用を考えるべきである。生態学会では担えない役割があるとすれば、その役割を担うように個体群学会を変えていく必要がある。
複数の会員からPEは生態学会Ecological Research(ER)と同等の評価を受けているという意見があったのには驚いた。10年前の個体群学会員ならば、少なくとも雑誌については、PEがERより高く評価されていると言っただろう。最近、ERの国内外からの投稿数は飛躍的に増え続けている。このまま推移すれば、数年後にはERの評価はPEを確実にしのぐことだろう。
合宿でのシンポジウムという形式を見直すことも検討すべきである。生態学会でも個体群関係のシンポジウムに多くの聴衆が集まる。もっと多くの参加者が集まる可能性がある。個体群学会では奇数年に合宿形式、偶数年に研究集会形式の大会を開いているが、後者のほうが参加者が多くなりつつあり、あと数年で、偶数年の大会のほうが重視されるようになるだろう。
せっかく海外講演者を招待しているのに、奇数年の大会参加者が少ないのはもったいない。偶数年の大会で一般口演の枠を作れば、参加者がさらに増える可能性は十分にある。生態学会より年会費が安いのだから、発表の場を求める人は増えるだろう。したがって、個体群生態学の新たな発展を担う企画シンポジウムと一般講演(口演・展示)を含めた大会形式に変える方が、若い人のニーズにもかなっていると思う。今と同程度の魅力のシンポジウムの企画で、おそらく、200名規模の参加者がある大会に、すぐにできると思う。現在の合宿形式では、会員資格が発表の権利、PE掲載資格とも結びついていないので(PE購読のみ)、会員の拡大には限界があるだろう。
いずれにしても、生態学会との連携は積極的に進めるべきである。