シカWGの皆様(長文ご容赦ください)
松田です。 ○○さん、ご意見有難うございます。
「楽観的にこれ以上の高密度化はないと見るか、悲観的に今後もシカは増え続け、越冬地は拡大し続けると見るかです。」という○○さんの提案
- 越冬地として適地はほぼ埋まっているので、新たな越冬地の拡大は少ない
- 知床岬のような飽和地域は大量死亡・増加の繰り返し
- 100平米運動地などのようなパッチ的環境では、さらに増加して植生を改変
上記の○○さんの意見に大筋賛成です。
「したがって仮に100%放置しても、知床の山全てが大台ケ原のようにスカスカの坊主になり、○○さんが懸念していた羅臼の漁業に影響が出るような土壌浸食は発生しないだろう」
○○さんから質問のあった件ですがhttp://www.odaigahara.net/saisei/odaisaisei.pdfに大台ケ原正木峠のスカスカの写真があります。1967、1993につづき(この2枚の写真が大台ケ原自然再生事業、シカ保護管理計画の大きな転機になりました)、2004年の3枚目の写真にも注目。
ただし、大台ケ原でも、全体がこの(山頂部の)ようなすかすかになっているわけでも、なると予想されているわけでもありません(正木峠は文字通り「壊滅」でしょう)。
屋久島調査でもシカが届かないような岩場の「リフュージア」に一部の固有種が残されているので、調査している植物分類学者○○さんの危機感も少しは冷静になりました。また、林道沿いだけ調べているので、深く林内にのみ生息する種も残っていることでしょう。しかし、もともと岩場に生育しづらい種、開けたところにしか生育しない種もあるので、全部が守られるわけではないと思います。
小規模柵による植生回復は、シカの食害の影響が甚大であること、食害の影響を除けば植生が回復することを実証する上で、各地で合意形成に効果を挙げているようです。大台ケ原でも丹沢でも、それがシカ捕獲の合意を導く効果があった。しかし、小規模柵だけで本当に固有植物個体群が保護されると期待することは、私は難しいと思います。それならば、よほど大規模な柵が必要でしょう。○○委員もそう主張されていたと思います。
完全に絶滅しなければよいというものではありません。問題は、自然植生に「深刻または不可逆的な」影響があるとみるかどうかです。深刻とは、植生の復活までにたとえば百年以上かかるような状態と定義してもよいと私は思います。
- ○○さんの第2の指摘である「長期的管理方針としては低密度にシカを叩き続ける方針でなく間引き後の回復を許し、何かの基準を持ってまた叩くという方針」・・・→単発的な間引きをしても効果は見えないのではないか・・・
○○さんとしては「密度操作実験を行うとすれば」という前提の上でのお返事だと思いますが、私もそう思います。
○○さん曰く「希少植物の分布地点、レフュージアに関する今年度の調査は、・・・個人的な感触としては、厳密な地点数でなくて主要な生育地点数であれば、減少率の算出のような作業は可能だと思っていますが。」頼もしいお言葉、ありがとうございます。希望が持てます。