鹿の「食害」の良しあしも、クマとの共存方法も、個体数次第

 Date: Fri, 11 Oct 2019 10:35:59 +0900 Facebook

シカの保護管理検討会として丹沢山を見せていただいた。以前は1枚目のような裸地が至る所にあったが,かなり植被率が改善していると感じた(丹沢全体がそうではない)。2枚目の堂平沢の堰堤がある沢も完全な裸地だったが,緑が戻っている(種が問題)。丹沢山一帯は1997年ころから植生保護柵を作り,丹沢では早くから対策を立てた場所という。古いものと新しいものが併設された保護柵も随所にあり,説明書きが微妙に違う。以前は「平地の開発で追い上げられた鹿による食害から」と書いてあった。その後,平地も山もシカがびっしり増え,私も検討委員に招かれた。当時,この「食害」という表現に,ある専門家から、シカの摂食は食害というべきではないというような異論がついたそうだ。たしかに、全くシカを排除した植生はむしろ不自然である。しかし、シカが過剰になってその「食害」で絶滅が危惧されたり、地域絶滅した植物は多い。丹沢では土壌侵食も進んでいた。シカが低密度であれば生態系過程の一部となる摂食も過密になれば食害になる。状況に応じ、解釈と表現は変わってよい。
 それはクマも同じだ。個体数が少なければ野生のクマは保護されるべきであり、人間の不適切な対応がなければ共存できる。しかし、過剰になれば、人間側に落ち度がなくても人間に無害とは言えない。クマ学者も、シカの経験から、そのことに気付いてほしいものだ。

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