海域管理計画における漁獲量の取り扱いついて

Date: Wed, 18 Oct 2006 16:49:38 +0900
Xさま 皆様
ありがとうございます。
【93-2002年の漁獲統計だけでなく】1985年から92年の平均漁獲量も記すべきでしょうね。キーストン種*については【】、スケトウダラが減っている以外は、特に激減している魚種はないと思います。他の魚種も調べて見ましょう。
 もちろん、漁獲量だけでは資源状態はわかりません。しかし、多くの魚種を利用することにより、漁業自体が上位捕食者と同じく、立派なキーストン種*1という位置づけもできると思います(辻祥子2006学術月報59:659-662)。オジロワシの餌解析に比べれば、漁獲対象魚種の資源評価はずっと易しいことでしょう。 たとえば、漁獲量と平均体長(が無理ならば魚価からある程度推測できるかもしれません)がわかれば、かなりのことがわかるでしょう。漁獲量が減って体長が小型化(あるいは魚価の下落など)する傾向が長続きしていれば、やはり乱獲が懸念されます。
 いずれにしても、豊富な魚種別漁獲量が得られることは、多くの魚種を利用している日本の沿岸漁業だからこそ可能なことであり、しっかりアピールすべきだと思います。ただし、そのためには、資源に異常が起きたときにそれを発見し、生態系の不可逆的な異変と考えられるならば、対処することが必要です。これは、既にある程度現場でやっていらっしゃると期待します。
 漁獲統計にある魚種(銘柄)と生態系の魚種は必ずしも対応していません(まぐろ?その他のカレイ類)。しかし、完全とはいえなくても、極めて多くの情報がそこから得られるはずです。これを上手に記述することが大切です。
 また、漁獲対象魚種以外の指標種【は、漁獲統計以外に】別途調査が必要になるでしょう。

Date: Thu, 19 Oct 2006 10:22:39 +0900
X様、各位

それにしても、このような統計量が存在すること自体、我が国の、あるいは北海道の漁業管理がかなりの水準にあることを示していると、私は常々感じているのですけどね!

全く同感です。
 2003年にMyers & Worm*2が上位捕食者(マグロ類)の9割減小説をNature誌に掲載したとき、用いたデータは日本のマグロはえ縄漁船のデータでした。それから、世界中のどこでどれだけどのマグロなどが取れたかの詳細なGISデータが揃い、それを用いて解析した結果です(結果については、強い異論が世界中から寄せられていますが)。
 これは日本の研究機関ではなく、漁業情報の結果なのです。
 漁業を行っていたからこそ察知できる海洋生態系の異変に築き、何をしたかという経験があれば一番ですが、漁獲情報と、それを補う環境調査によって、この海域の管理を行うという設計図を描くことができれば、高く評価されると思います。

*1:*Keystoneは第1音節にアクセントがあるため、生態学会編「生態学事典」では「キーストン種」と表現しています

*2:Myers RA, Worm B (2003) Rapid worldwide depletion of predatory fish communities. Nature 423: 280-283