Date: Sat, 29 Sep 2007 03:59:03 +0900(一部改変)
昨日、水産学会(環境保全委員会企画)シンポジウム「海を守り,食を保障する持続的漁業―海洋保護区と自主管理型漁業」桜井泰憲(北大水産)・松田裕之(横浜国大)・牧野光琢(中央水研)をやりました。 手前味噌ですが、「環境に優しい漁業」の将来像の一つの方向性を示すことができたと思っています。水産学会で「海洋保護区」を正面から取り上げたのは初めてではないかと仰っていました。それは今回の海洋基本法をめぐる水産学のスタンスにもなると思っています。
私の海洋基本法に対する個人見解は、別の機会に述べます。
漁業権の問題、 生態系サービス 生態系管理としての漁業管理 などが議論の中心になりました。 秋田のハタハタ、愛知のイカナゴ、京都のズワイガニ、知床世界遺産海域計画 の実践例とともに、 日本の漁業(権)制度の将来性と国際展望を示すことができたと思います。
率直に言って、高木委員会緊急提言には、日本の漁業制度の正の側面が全く触れられていないように思います。この提言をそのまま実行しようとすれば、明治時代の「官有宣言」の大混乱の二の舞になりかねません。
私にはよく水産学会の組織構成が理解できていなかったのですが、さまざまな委員会・懇話会が既にあります。今回の海洋基本法と基本計画に密接に関係する委員会も、水産環境保全委員会、 漁業懇話会 など 当然ながらたくさんあります。
水産政策審議会 という諮問機関があり、その正副座長も水産学会員と聞きました。既往の委員会が取り組んでいなかったとすれば、海洋基本方針については、すでに法律ができているのですから、学会として意見を述べるほうがよいと思います。しかし、他の委員会や学会員の意見も聞いて、我々の意見をまとめる時間的余裕があったほうがよかったと思います。特に、上記の水産政策審議会の委員の意見は聞くべきではないでしょうか。
今まで、水産業界、特に漁業者との関係は、水産学会員にとってはそれなりに良好だったと思います。それでも現場の本音や実態を聞くにはかなり苦労したという話をよく聞きます。
水産学会としては、會田会長挨拶にも「水産学と日本水産学会の未来 Part-I、II」という連続シンポを理事会として企画し、
「定款の目的には「水産学に関する研究の進歩普及を図り,もつて学術の発展に寄与することを目的とする。」と定められておりますが,私には、さらに「水産業の発展」,「水産教育,社会連携と国際協力の推進」や「人類福祉の向上」等への貢献の視点も必要ではないかと感じました。
とあるように、今後水産業の現場とより近い学識活動を行う方向にあると思います。
水産政策委員会が学会内部で十分に議論を図らずに外部に対して意見を述べることは、水産関係者の水産学会への見方を一変させ、上記会長挨拶に示す水産学会のより業界志向の動きに逆行しかねない誤解が学会内外に生じることを、私は憂慮します。