名護市長選と今後について

 名護市長選、米軍基地移転反対派の稲嶺さんが勝ちました。投票率が76%とほぼ前回並みで、それなりに差がついての勝利でした。最大の争点に対する地元自治体の有権者の民意がはっきり出ました。
 繰り返しますが、知事は市長選の結果を待ってから埋立の可否を答えることができたはずです。拒否すると公言していた県知事が翻意するには、市長選で推進派が勝つというのが大義だったといえるでしょう。当初、民主党政権の森本前大臣は2012年末に申請を出すつもりでした。それならば13年末までに回答が必要でしたが、自民党政権は申請を遅らせました。回答期限が申請から1年とすれば、安倍政権により、市長選後の返答が可能になったわけです。それを昨年末に許可したのは県知事の判断ということになります。しかも、安倍首相が靖国を参拝して米国に「失望」された日に返答するという、米国に恩を売るには最悪の時機でした。県知事が環境だけでなく、総合的に考えて判断することは正しいと思いますが、1年前には拒否すると公言していたはずです。
 返答までに地元の民意(市長選)を待つことができたのにそれをせず、「公約」を覆して許可した県知事は、地元と大きなねじれを自ら招くことになりました。
 環境影響評価補正書でも明らかなように、基地を作れば環境への影響は避けられません。まして、かつての真珠湾のような敵の攻撃にさらされた場合、環境には甚大な影響が出ます。基地は抑止力になるという意見もあるかもしれませんが、いずれにしても、環境影響評価は有事を想定したものではありません。そして戦争は人間だけでなく、環境にとっても最大の影響因子の一つです。さらに、反対運動が続く中で強引に工事を進める環境影響も想定されていません。ただし、研究会意見を提出した際に、厳しい反対運動が起こる懸念は前大臣からも指摘されていました。
 辺野古の大浦湾は、きわめて豊かな自然に恵まれた場所です。基地を作ることに反対し、政府からお金をもらうことを拒むならば、この自然を持続可能に活用することが名護市と市民の暮らしには必要なことかもしれません。日本だけでなく、米国市民にも呼びかける必要があるでしょう。基地と引き換えのお金よりは一時的にはずっと少ないでしょうが、子々孫々にいたるまで、自然の恵みを受けることができるでしょう。大浦湾の自然の豊かな価値を正確に評価することが、まず、専門家にできることかもしれません。
 もう一つの懸念は、那覇空港の拡張問題との関係です。県知事が許可する際にはこれがセットのように報道されました。辺野古の最大の問題は埋立土砂問題です。那覇空港の拡張と同時期とすれば、ますます、土砂の調達が難しくなるかもしれません。