チリ産養殖サケ問題

Date: Wed, 1 Jun 2016 12:51:10 +0900
【】お忙しいところ、ありがとうございました。
huffingtonpostへの投書「日本のスーパーで売られているチリ産の鮭を地元の人が食べない理由」に対するジョージ・ホルヘさんの反論「チリでサーモンは大人気の高級魚!サーモン記事のここがデマだ!」を拝見しました。これを引用した勝川俊雄さんは「着色料って、アスタキサンチンだったのか・・・アスタキサンチンカニやエビの殻に含まれていて、健康食品の材料にもなる有用物質です」と付け加えています。

 元の記事【に対するホルヘさんの反論に】説得力があるという斗ヶ沢秀俊さんのご意見に賛成です。

 ただし、ジョージ・ホルヘさんの批判にも若干気になる点がありました。

  • 「良心的な会社はきちんと魚を餌にしているそうですが...」に対して、「基本的にサーモンの餌は鶏肉の残渣ミールや魚粉、大豆粕等の配合飼料です。魚ベースの飼料なんてまずありえません。」と書いていますが、まず魚粉の原料は魚です。いわゆる生き餌を想定されているのだと思いますが、MSC認証を持つ水産資源を用いた魚粉は推奨されると思います。魚粉を使うほうが不飽和脂肪酸も高いでしょう。魚を使わない【で農産物を使う】ほうが「よい」とは言えません。
  • 「鮭を1キロ増やすのに4キロの魚が必要」を「全くの嘘」として、「サーモンの増肉係数は約1.2-1.5と言われ」とあります。乾燥された餌(ドライペレット)を使うか、水分を含んだ餌を使うかで、この比率は大きく異なります。餌効率については2種類の指数があることに注意すべきです。

 サケマスが1.3というのはFCR (Feed conversion ratio)でしょう。これは投餌量(乾燥重量)を増肉量(湿重量)で割ったものです。分子と分母が違う状態で、異なるタイプの餌を使う養殖法間の効率の比較には向きません。
 養殖マグロは生餌を使っていますから(それ自体が問題【と思われる方もいるかもしれませんが】)、まぐろの15と比べるならば、FFDR (Feed fish dependency ratio)、すなわち餌中の魚粉や魚油の量を原魚換算したものと比べるほうが適切でしょう。サケマスの餌効率が4程度というのは、このFFDRのことだと思います。(永野P5)
 なお、ASCやSeafood WatchのFFDRでは、加工残滓由来の原料は計算から除外されているかもしれません。加工残滓を利用することは「もったいない」精神に即した行為だと思います。食用に【でき】る魚を利用したほうが効率が高いとしても、どちらを推奨するかは別問題でしょう。
 さらに、小型魚をとって魚粉にするより、小型魚を保護し、大きくなってから取って食用にするほうが効率がよいともいえます。しかし、これは、上記の効率計算には考慮されていません。
 下記を参考にさせていただきました。
日本水産「GLOBAL」79号2014年12月発行 永野一郎「水産資源と養殖」5-11
Coframe報告会2015年5月22日 永野一郎「養殖の餌問題と解決への選択
(以上)