MSY批判はIQ制度批判にはつながらない

Date: Wed, 22 Jun 2016 06:39:23 +0900
水産経済新聞2016.6.10の櫻本さんの講演に関する記事に「IQ制度がMSYに基づく」とありますが、私には理解できません。たしかにIQ(個別漁獲割当量)の設定には漁獲枠(全漁業を規制するTACでなくある漁業に関する漁獲枠でもよい)が必要です。しかし、それがMSYに基づく漁獲枠である必要はありません。
 IQは漁獲枠を遵守させ、成長乱獲を防ぐうえで効果的な制度の一つです。MSYを否定する主張自体は、TACを批判し、出口管理を不要という主張の論拠にはなりません(もとよりそのお考えはないものと思います)。密度依存性の議論のどこにも、IQ自体の批判につながる解析はないと思います。
 いくつかの論点が混在しているように思います。

  1. 政府が規制するか漁業者の自主管理か=資源動態モデルでは両者を明示的に区別しません。だから密度依存性を議論しても自主管理が良いという主張の根拠になりません。漁獲枠を定めれば、自主的IQもあり得ます(実際に日本で試行していると聞いています)。ただし自主的ITQは独禁法に抵触するでしょう。(個別割当ての無償譲渡ならよいはずです)
  2. 出口規制(TAC)が有効か入口規制が有効か=たしかに、漁獲枠のない入口規制だけならIQを設定できませんが、これも密度依存性やMSYの議論とは無関係だと思います。【】
  3. IQを導入したことと資源が回復したことの間に、因果関係があるかどうかは、個別に検証すべきです。しかし、実証例が日本にないとしても、日本でIQが機能しないとは限りません。それは別の論拠が必要でしょう。【】