ミナミマグロ国際裁判と資源管理

Sent: Monday, July 2, 2018 5:32 AM
 最近のミナミマグロ事情について,私の理解を申します。
 CCSBTは日本語も公用語?らしく,最新の文書が日本語でも入手できますね。「第22回科学委員会会合報告書」が詳細。まずは水産庁の「国際資源の現況」 にある以下の詳細版のP20-4図5をご覧ください。資源(産卵親魚量)は1990年頃まで減り続け,その後低位安定,2002-2007頃まで再び減り,その後回復しているという分析です。P20-5図8(あるいはCCSBT資料の図5がより鮮明)をみると,2001-2009まで,資源は低位(横軸がBMSY以下)なのに漁獲圧が過剰(縦軸がFMSY以上)になったという分析です。
 以下は古い記憶に基づきます。
 2020年までに1980年の資源量に回復という数値目標,日本は容易に達成すると主張して漁獲枠を増やし,国際裁判になりました。そのときに操業海域の資源量が回復基調なのは一致したが,操業海域以外でも資源が回復しているかどうかが論点でした。
 私たちの論文(Moriら2001)では,日本側の主張通りに回復しているとしても,そして当時の漁獲制限を継続したとしても,2020年目標は達成できないと予測しました。年齢構成の歪みから,親魚量が底を打った1993年生まれが成熟する2001年には親魚量増加が頭打ちになる(減る可能性すらある)。これを「逆ベビーブーム効果」と命名しました。2003年には,CCSBTも2020年目標は達成不可能という認識で一致し,目標の見直し作業が始まった。実際には漁獲量を増やし,かつ2007年頃には漁獲量の過少申告問題も起きました。その間資源は減ったようですが,2010年以後は緩やかな回復基調になったとされています。
 国際裁判当時,CCSBT参加の(豪州側の?)専門家ですら,年齢構成の歪みなど念頭になく,2020年目標は達成可能と思っていたようです。私の主張はCCSBT内に届けるべきものだったと思います。私は,ミナミマグロ絶滅危惧種に指定されたことで水研から相談を受けましたが(Matsuda et al. 1997),CCSBTに参加したことはありません。【】
 もっと私に社会発信力があれば,CCSBT以外の意見がいろいろな方に届いたかもしれませんが,CCSBTにまず届けるべきでした。