WGの皆様
今回、羅臼側の植生が一定の回復を見せているという声が多く聞かれました。シカの密度操作実験を主張した者として感無量です。当時は、シカを獲らないという選択肢も大いにあり得ました。どちらがよいとは言えませんが、運命は大きく違っていたと思います。
3時間の会議だけで原案を大きく変更するのは無理でしょう。昔は事前事後にメールで深く議論を進めていました。第2回の会合で来年度方針を決めればよいかもしれませんが、去年の調査結果を見て来年度の計画を練るのでは対策が1年遅れます。【】事前に議論しておく体制がよいと思います。【】
ヒグマについては、数々の手段、調査、評価項目を掲げながら、目標を達成できずむしろ悪化していることが明白です。環境省推進費を付けたことが新聞に載る「成果」ですが、解決しなければ何もなりません。人間の行動を制御し【ようとし】ても、クマの数は増え続け、人を恐れなくなる一方です(札幌でさえ似た状況【】ですが)。ゾーニングをしたのは、私としては、クマ優先の場所では効果的に人の行動を制御する手段を備え、人優占の場所では遠慮なくクマを駆除することで、両者の共存を図る意図でした。そのどちらもできていないし、クマ優先の場所が遺産地域を超えて広がっています。(これは地元社会が選択したことですが、このままでは解決しないと私は思います。それも自由ですが【】)
2年ほど前まで知床財団はクマの追い払いに追われてパンク寸前と思っていましたが、初回出没個体の追い払いの後は、駆除目的の出動に限定してよいかもしれません。繰り返し追い払っても結局は人慣れが続いて駆除しています。(その対応に、ゾーンの差があるか、今回はよくわかりませんでしたが)知床では「順応的管理」という言葉がほとんど聞かれなくなりましたが、本来クマは総個体数と問題個体数の増減により人慣れだけでも駆除するか、問題個体も学習放獣を目指すかなどの対応を変えるつもりでした。そのために、鹿と異なり総個体数だけでなく問題個体数のモニタリングも必要と主張し、道南でその数字が上がるようになった。知床でもできると思いますが、管理計画に書き込まれてはいません。
【知床】岬は当初から【シカの生息】数を激減させるという大成果を収めました。【】岬の植生(特に稚樹更新)の目標がなお未達成というのはわかりますが、その意味では現在の方策がさらに効果を上げているとは言えません。2年ほど(あるいは1年)銃猟か(と)罠を辞める手もあると私も思います。周囲から移入してくる分まで岬で捕獲し続けるという(近畿のカワウの竹生島のような)状況ならそうは申しませんが、岬にいる集団の自然増加数【分を獲って】を減らすのに一進一退の状況です。
有効活用を推進することに賛成ですが、将来密度を下げた時に、捕獲数も減る、あるいは雄中心の捕獲が必要になる。その時にどれくらい利用できるかを数字で理解して進めていただきたい。それがなければ、今から乱獲の心配をしなければならなくなります。
狩猟に頼るのは、残念ながら現状では誤射事故の危険があると言わざるを得ません。【】その意味では、知床財団の存在は極めて貴重だと思います。その発展が、日本全体の自然公園管理の命運を握っているとさえ思っています。