感染者数をどこまで減らせば、クラスターつぶしは機能するのか

Ver.2020050514:26

通常のSIRモデルに、以下のように「クラスター対策班」が1日当たりつぶす感染者数εとそのうち感染経路や濃厚接触者の情報が得られる割合uを考慮する。単純すぎるモデルと言われるかもしれないが、考え方の整理には役立つはずだ。

dS/dt = -Max[0, β(1-f)IS- εu]

dI/dt = Max[0, β(1-f) SI - εu]– γI

dR/dt = γI

ここで全人口N=I+S+Rである。(死亡は無視)

もともと、発症して隔離されたらそれ以上の感染は(院内感染を除けば)ないので、病院に行くか、発症した時に外出等を自粛すれば基本再生産数R0(=β(1-f)N/γ)は隔離等をしない場合と比べて違う値をとるはずだ。しかし、それは確認感染者全員が同じ事情なので、fという割合に反映されるだろう(医療崩壊が起きなければ)

 クラスター対策班が処理できる患者数は限られる。だからεuは患者数I(t)の多寡によらないだろう。

1)ε=0のとき、dI/dt<0 となる抑制率fの条件はRt=β(1-f)S/γ<1となることだ。実効再生産数Rtは上記のR0のN(全人口)をS(非感染者数)に置き換えている。

2)クラスター対策εuによって封じ込めることを考える。dI/dt<0 となるεuの条件は

I(t)<Icu/[β(1-f)S– γ]となることだ。つまり、感染者数がある閾値Ic以下でないといけない。その閾値Icは対策班の処理能力ε次第である。この条件は書き直すと

I(t)/εu<1/(Rt-1)γ となる。つまり、緊急事態でf=0.2のときの実効再生産数がたとえば0.4、γが0.046(回復まで約22日)とすると、緊急事態解除後(たとえばf=0.8とする)のI(t)/εuは36で、対策班の1日当たり処理能力の40倍程度になったら、対策班は封じ込めを続けられることになる。ただし、濃厚接触者情報などの提供割合uが低いと、その分だけ感染者数を低く抑えこむまで緊急事態は解けないことになる。緊急事態措置中の現在はRt<1だろうから、問題は緊急事態を解除した時のRtである。それを1未満にするために、対策班の効果(ε)と感染者からの感染経路等に関する報告率の向上に期待する。もちろん、この式は単純化しすぎているので、数字は怪しい。しかし、考え方は成り立つはずである。