Date: Thu, 15 Dec 2005 11:41:41 +1200
皆様
この間のみずほ証券発注ミス事件についてですが、ようやく「買った側」を報道する姿勢が見え始めました。 そこで、検索してみました。
12月11日に ビジネス英語雑記帳「みずほ証券の発注ミスを英語で言うと」が末尾のように紹介しています。門外漢の私が業を煮やして関係者にメールを出し、ネット公開したのは12日ですから、その1日前にはこのような主張がされていました。やはり世間に良識はあるものです。
それ以降の経緯を日経新聞で見てみると
- 11日朝刊:強制現金決済あす決定
- 12日朝刊 新聞休刊日
- 12日夕刊:誤発注問題、東証にも過失、1株91万円で調整 運営者信頼揺らぐ★この段階では全く買い手の問題に触れていない
- 13日朝刊:みずほ、東証負担調整へ 2面「みずほの異常な安値の売り注文に・・・証券会社・・・インターネット経由の個人投資家が飛びついた・・・(みずほが買い戻した47万株を除き)約14万株の買い注文が成立。この7分間の取引が、約400億円の損失につながった」★この段階でも、「巨額損失 責任の行方は」の記事に買い手の責任は書いていない。11面に「富士通へ責任追及必至」とある
- 13日夕刊: 記事がない! ★姉葉の記事は毎日あるのに、なぜ?
- 14日朝刊: UBSが140億円取得などの記事(いきなり実名飛び出す)、ネット掲示板で買い手の責任を問う声、火事場泥棒の表現も。与謝野大臣が買い手のモラル問う談話★ようやく買い手の顔がみえてきた。決済する前に出さなかったのは故意か、新聞社の方針が変わったのか。大臣談話は遅すぎる。決済前に止めることができるのは政府だけだった。それを期待する記事を報道は事前に書かなかった。これは報道と政府が解決の機会を逃したということだ。東証がみずほに決済をやめろとは言えないだろう。しかし、損失のほとんどはみずほでなく、東証と富士通が支払うことになると思う。
- ついでに、14日夕刊には朝日でもUBSという買い手の実名が報道されている。あれれ、朝日も意見を変えたのかな?買い手に責任はないと思うなら、実名を載せるのはおかしいのでは。
さて、これからどうなるか。UBSなど大口買い手の実名を出したのだから、小口の買い手の実名も出すべきだ。UBSだけが「火事場泥棒」なのではない。そして、自主的な返却を求めるべきだ。モラルのない社会では、リスク管理はできない。これは常識である。今回の誤発注は、度を越したものであり、良心に期待するよりないし、良心が働けば、誰が死んだわけでもなく、ほとんど何の問題もない事件なのである。
これからの報道の動きに期待しています。*1
12月11日に ビジネス英語雑記帳「みずほ証券の発注ミスを英語で言うと」
★ 最後にひとこと
ところで、気になっているのですが、どうしてみずほ証券や東証のことばかりが取りあげられるのでしょう。一円というあり得ない売値に飛びついた買い手たちはどうして批判されないのでしょう。買い手は、(株式の値動きには一日当たりの変動幅の制限がありますから、1円で買えるわけではないものの)異常な売り注文で相場が下がったのを見て、買い注文を入れるのは、公正な価格形成の一翼を担う市場参加者として無節操ですし、悪く言えば火事場泥棒と同じです。しかも買い手の多くは個人客ではなく、証券会社でしょうから、なおのこと非難されて然るべきだと思います。
ところで、ちょっと今回の発注ミスとはおもむきが違いますが、自分たちがマーケットメイク(売り手がいない、買い手がいないといった事態を防ぐために、市場で売り手と買い手の間に入って、自分の勘定で売り買いすること)をしている市場で、システム障害により誤った価格情報が出たところで、それに基づいた取引が成立してしまったという例があります。
そのマーケットメイカーがどうしたかと言うと、あっぱれなことに、上の民法95条をちらつかせながら、いったん成立していた取引をキャンセルして、事態を収拾してしまったのです。しかも、伝え聞く所では、キャンセルされてしまった人々への説明で、「証券取引法の精神」うんぬんという一句がふりまわされたそうです。乱暴な感じもありますが、一定の見識に立っての問題の処理ということでは、何らの原則も提示されない、今回の誤発注をめぐるドタバタ劇に比べ、数段上を行っています。