管理モデルにおける環境変動

Date: Sun, 21 May 2006 15:12:33 +0900
○○さん,まつけんの皆様:
過去の時系列(特に定常状態近くで変動しているもの)からrを推定するのは至難の業です。そして、このrとその変動σが絶滅リスクに大きく関わるというのが、Hakoyama & Iwasaの結果です。彼らの場合はまだKを求めてからrを推定したのですが、Kも不確実となると、ほとんどお手上げでしょう。
 しかし、10^10年以上後の絶滅リスクなど、私には興味がありません。もっと簡単に考えて良いでしょう。要は、エンドポイントを絶滅におくのではなく、目だって減らないことにおけばよいのです。それでも、そのリスクはrとσに大きく依存しますが、100年後までのリスクを十分下げる順応的管理を提案することは可能です。そのためには1) rの年変動だけでなく、平均値の不確実性も十分に考慮すること(年変動を考慮すればいろいろな値をとるので十分と思うかもしれませんが、長期間の計算をすると、その幾何平均はほとんど誤差がなくなります)
2) 減ってきたら管理して、それ以上減らさないようにする担保を設けること
3) 保全措置の効果にも不確実性を入れること。極論すれば、効果ゼロでも、事業をやめればよいとすること。
  成長率の変動のほうが、個体数の変動より激しいでしょう。年変動の自己相関によりますが、相関がないとすれば(あるいは負の相関があるならば)、成長率(あるいは毎年の繁殖成功)の変動はならされて、個体数はそれほど変動しないと思います。(異常年の破局はともかく、正規分布で変動するなら、ちょっとσが大きすぎる気もしますが)
 環境収容力については,当然ながら、高くおくほど絶滅リスクは低くなります。反対に、低くおくほど、事業がなくても絶滅するリスクは高くなるでしょう。
 上述の通り、これは個体数変動であって、成長率(繁殖成功)の変動ではありませんね。毎年の個体数のデータがありますか?それがないと、少し苦しいですが、さまざまにσの値を仮定して、過去11年間に上記の幅に収まったパラメタだけ用いて計算するという手があります。
 鳥学者も全数調査をおこなう癖があるので、個体数推定誤差を無視し、全部過程誤差(真の個体数変動)と見なしがちです。本当は推定誤差もあるでしょうから、過程誤差を過大評価することになるでしょう。