11.22東大海洋研 シンポジウム 議論のたたき台

Date: Sun, 12 Nov 2006 11:24:08 +0900
 11月22日に東京大学海洋研究所で開催されます研究集会「漁業管理におけるリスク評価と合意形成のための社会経済学的アプローチ」の議論のたたき台を牧野さんに作っていただきました【】。このうち、水産関係以外の方にも重要と考える点を以下に述べます。
 牧野さんのたたき台にあるように、合意形成においては、以下の3点が重要だと思います(ご意見歓迎します)。

  • まず、それぞれの発表者の問題認識・現状認識を整理する必要がある。認識を共有している点と、相違のある点。
  • 科学的論点と、価値論的な論点は共に不可欠であるが、議論は分けて行うべき。
  • 研究、行政、漁業者、(消費者)の役割はなにか、その上で最終的には「今後どのような研究が必要か」というところまで持っていければ成功。

 その上で、水産資源TAC制度については

  • 資源回復【】目標の策定は、利害関係者の合意を経ぬまま、科学者のみで決められているのが現状と思われる。(仮に資源回復水準を合意できるとしても、5年後までに回復するか10年後までに回復するかという目標設定により、ABCは異なる。目標設定は科学的には決められない。目標設定の合意がないABCに漁業者が従わないという水掛け論が続いている)

というのが最大の問題と思います。せっかく資源回復確率など、リスク管理の手本となるような評価を行っているにもかかわらず、上記の点が解決されない限り、ABCは絵に描いた餅だと思います。
 しかし、TAC制度になってよい点もありました。私なりに挙げますと

  • 資源変動の激しいマサバ資源についても、まき網漁業者も資源管理の必要性を認めるようになったこと。(マイワシはまだ)
  • (古典的)MSYのような旧態依然たる役に立たない資源管理理論と決別し、資源の不確実性と自然変動を前提にした管理方策を提案し、資源回復確率などを示して順応的リスク管理の手法を他分野(たとえば野生鳥獣管理、環境影響評価など)に先駆けて実施しているといえるでしょう。