Date: Mon, 25 Dec 2006 07:03:49 +0900
○○さん、○○さん、○○各位
○○君の提案で、「これから論文を書く若者のために」(これ論)が話題になりました。あの本が出るときから言っていましたが、あの本には大事なことが抜けています。
研究者としての論文のEndpointは論文が受理されて世に出ることではなく、それが世界に評価されて認められることです。そのためにすべきことが、「これ論」には書かれていない。
○○さんや○○さんは、ある意味では、すべきことをすでにやっています。特に「指導」したつもりはありませんが、
- (海外の)一流の研究者と連絡を取ること(これは投稿前にもできる)
- 受理された時点で(または世話になっていたり、競合相手が類似論文を準備中なら投稿した時点で複数の相手に同時に)別刷りを送り、挨拶すること。
- 国際学会で発表すること
【】我々教授に向かってだれだれに紹介しろ【などと】(丁寧に)頼んでくるFellowや院生も【】いた。 上司は使うものです。
さらに「論文を書いた若者のために」言うべき助言を追加すれば
- 自分と似たような研究が後から出て、それに引用されていたら、著者に挨拶する。彼らこそ自分の最大の理解者であり、末永く大切にすべきです。可能なら学会で、または直接相手に会いに行く。(かく言う私も、まだ○○に会ったことがない。メールは毎年やり取りしているが、もったいないものだ)
- 引用されていなかったら、自分はこのような論文をすでに書いていると連絡する。引用しないのはけしからんと責めるより、単に知らせればよい。わざと無視したのではなく知らなかったとすれば、相手が有能で真摯な人なら次から引用してくれるし、その後は推薦状などできる限りのことをしてくれる。マイナーな英文誌に出すのは不利だというが、むしろ先に出すには有利。問題は上記の対処をしないこと。
- 傲慢さと研究者としての積極さは違う。前者は有害で後者は必須。自分をアピールするときに重要なことは、自分は偉いんだと自分で書くことではなく、相手に評価してもらうことです。良い研究をしたことの客観的根拠を挙げることは重要だが、それは全部自分の力だという必要はない。当然、共著者やさまざまな人の貢献があってできたと謙虚に述べるほうが良い。これは日本でも外国でも同じこと。
- 何がうまくいって、何が失敗したかをきちんと総括し、自分独自の「マニュアル」(秘伝)を作ること。この作業そのものが最も重要。発表するときも、何が受けて何がよくないか、経験から学ぶことです。研究者としての心構えは「これ論」を読んで学ぶことではなく、自分の苦い経験から培うものです。
とにかく、まず、良い研究を論文にすることです。それなしでは、上記の助言は役に立ちません。
まだまだあると思いますが、とりあえずここまで。