生物学者はなぜ雄と雌をカタカナで表記するのか?

 学術用語としての生物名の和名はカタカナで表記するのが一般的である。これは文科省の方針だろう。しかし、科レベルで異なるマイワシとカタクチイワシをあわせて「いわし類」と呼ぶときに、水産学者の中にはあえてひらがなを用いることもある。
 オスジカ、メスジカなどというとき、あるいは単に「オスとメスが」などと書くときにも、雌雄をカタカナで書く生物学者はかなり多い。これにはどんな根拠があるのか? 私は、これは漢字でよいと思うし、いつも漢字で原稿を書いている。
 困ったのは雄ジカと雌ジカという表現だ。これには牡鹿(オジカ)と牝鹿(メジカ)という由緒正しい日本語がある。しかし、こう呼ぶ哺乳類学者は聞いたことがない。実は英語にもあって、それぞれbuckとdoeというらしい。実は英語で論文を書いたときに英文校閲業者にこの表現に直された。全部は従わなかったが、一部はこの表現が残っている。
Matsuda H, Uno H, Kaji K, Tamada K, Saitoh T, Hirakawa H, Kurumada T, Fujimoto T(2002) Harvest-based estimation of population size for Sika deer on Hokkaido Island, Japan. Wildlife Society Bulletin 30(4):1160-1171.
 いずれにしても、私は雄と雌をカタカナ表記することには反対だが、皆さんはいかがだろうか?