大西洋クロマグロがCITESに掲載されそうだ。今までは、この手の話題ならば私に意見を求める報道が多かった。しかし、今回はそうではない。マグロの完全養殖は、将来への期待はともかく、数年以内の喫緊の解にはならないだろう。大西洋クロマグロの掲載の是非より、太平洋クロマグロの資源管理が重要と私は言っているが、報道は見向きもしない。
今夜は面白かった。生態学会大会の最中に、ある局から大会事務局にクロマグロの取材がきた。私も事務局のそばにいたが、取材希望は私ではなかった。
報道機関は、あらかじめ期待する意見を言いそうな有識者を探す。それで報道の筋書きを作るのはよいが、今回、どんな解を求めているのだろうか。
大西洋クロマグロが禁輸されても、トロが食えなくなるわけではない。マグロ消費量を抑えろと言うのは以前からの私の持論だ。何を騒いでいるのだろうか。今回の教訓は、国際漁業管理にとって、今までは日本が乱獲の主役だったが、今回は欧州漁業機関が乱獲を続けていたと言うこと、その欧州はワシントン条約とマグロ管理で正反対の主張をしていること(日本はそんなことはない)。結局、今後の水産資源管理は、ワシントン条約とその背後の環境団体の意向を無視できなくなったことがわかったと言うことだ。
前向きの話をすべきだ。それは、ワシントン条約では俎上に上らないかもしれない、他の先進国が直接獲らない、太平洋クロマグロの資源管理である。これを語る報道機関を、まだ知らない。最も大事な問題から目をそらすのは、残念である。