環境省「海洋生物レッドリスト」を批判する

Date: Sat, 22 Dec 2012 12:09:12 +0900
 今まで「水産庁の希少生物データブック」と言う形で対応し、海産生物が環境省レッドリストの対象外でした。生物多様性条約愛知会議(COP10)のときに海産生物も含めると環境省が宣言したらしく、その委員会が立ち上がりました。松田も委員になりました。
 しかし、大型鯨類やマグロなど国際水産資源は対象外とし、水産重要魚種【+小型鯨類】は水産庁が判定するなど、きわめて中立性を疑わせる方針があからさまです。
 このような状態では、環境省RDBは信用を失うでしょう。たとえ妥当な判定だったとしても、利害関係省庁があからさまに自ら判断するというのは大問題だと思います。
 私は、国際機関IUCNがミナミマグロを絶滅危惧Ia類(CR)に掲載したように(シロナガスクジラはIb類)、絶滅の恐れの低いものを杓子定規に掲載しようとは思いません。しかし、水産資源でも激減した種は載せざるを得ないし、現にニホンウナギはおそらくそれに該当し、ニホンウナギを対象とする淡水魚レッドリストのみが今に至るまで改定されていません*1。そのような事態は、日本政府と日本版レッドリストの信頼を大きく損なうものだと思います。
 私は、委員のクビをかけて抵抗するつもりです。【第2回委員会】は欠席しましたが、私以外の委員は反対しなかったので、このままとなりました*2
 ニホンウナギのような場合はリストに載ると思いますが*3、やみくもに掲載しようという委員構成でも判定基準案でもありません。水産庁が手前味噌で評価せずに、環境省に評価させたほうが政治的にも得策だと思います。
 外国の生態学者と話していて、捕鯨再開に反対する最大の理由は日本政府への不信でした。それならばとWWFジャパンに働き掛け、対話宣言まで出してもらいました。多くの外国の友人はほめてくれましたし、私はPew Marine Conservation Fellowにも選ばれました。【】しかし、結局、水産庁はWWFJというカードを捕鯨では何も使いませんでした。彼らの閉鎖性は変わりません。私は、捕鯨が再開できない理由が改めてわかった気がします。

*1:環境省レッドリストの汽水・淡水魚は2013.2.1に公表http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=16264

*2:委員会の結果は2013.4.5公表http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=16534

*3:松田の水産学会大会講演要旨参照http://risk.kan.ynu.ac.jp/matsuda/2013/MarRedList.html