ワシントン条約と象牙−市場閉鎖と資源管理、どちらが有効か

2016.10.7 10:00
象牙市場について書きました(WEBRONZA)。ゾウは禁猟政策のケニアでは減り、附属書IIに格下げしたジンバブエなどで増えている。どちらが有効かを考えるべきだ。格下げ後2回だけ輸出されているが、本来もっと緩和を目指していたところ、国際世論はそれどころではなくなりつつある。
 いくつか論点が【想定され】ます。

  1. 象牙を今後も有用な自然資源とみなすかどうか。」たとえば鯨肉は、多くの欧米人は資源とみなさないし、ほかの人が食べることも反倫理的と考える。この発想を【ゾウに対しても】とれば、私の意見は論外でしょう。しかし、対象種が絶滅しないなら、自分の選択を他人に強制すべきではないと私は思います。多くの欧米人が菜食主義になっています。彼らにとって、家畜も含めて動物は資源(供給サービス)ではなくなりつつあると思います。それは彼らの「選択の自由」ですが、強制される筋合いはないと私は思います。
  2. 「一方で象を利用している中で他方で市場閉鎖して保護できるか。」CITESには【たとえば】類似種規定があり、一方で保護すべき資源と区別できないものは他方でも取引を禁止すべきという論理があります。高価なものであれば、Traceabilityの確保やDNA鑑定も含めて手段があるはずで、現に違法取引の摘発が可能です。しかし、議論を経てジンバブエなどのアフリカゾウを附属書I(禁輸)からII(許可証が必要)に格下げし、南アのアフリカゾウも格下げに追加したはずです。【IIに格下げ後2回だけ合法的に輸出したが、常時輸出できるようにしたほうが、密輸しづらくなるという意見もあったはずです。】それがうまく機能していないという主張ならば、再びIIからIにすればよい。実際にその提案も検討されたと思います。しかし、可決要件(2/3)をとれそうもなく、やめたのでしょう(要確認)。そうであれば、本来のCITESマターではない国内市場閉鎖という法的拘束力のない決議を行う正統性も、私には疑問です。中国が市場閉鎖するのは中国の内政問題で、わざわざ決議を上げなくてもよかったこと。(日本も含めて違法取引をCITESが監視し、評価するというのは良いと思います。)
  3. 「違法取引がある以上、閉鎖すべき」。これは資源の有用性を否定している方の発想だと思います。それならば、(悪質な)交通違反があるなら自動車を廃止すべきという意見と、論理的には同じことでしょう。規則を守れば社会的に有益であるとみなしているはずです【】。違反を厳しく取り締まるほど秩序が保たれるかといえば、これも疑問です。【イエロー】カードを多用するサッカーの審判のほうが良い試合を保てるとは限りません。結局は、規則とその趣旨を理解してもらうことが重要です。